2022.03.28

消費者行動とは?定義やモデル、購買行動との違いをマーケティング研究に基づき解説

消費者行動とは?定義やモデル、購買行動との違いをマーケティング研究に基づき解説

消費者行動とは、企業が提供する製品やサービスを購入・利用する人々(=消費者)が、一つの商品の購入に至るまでの行動のことを指します。

この「行動」とは、店舗やECサイトに訪れるといった、いわば“購入の手前”の行動を指すのではなく、消費者である人々が個として持っている思考や、社会やその人が所属する集団による影響なども含んだ、幅広い概念です。

この記事では、マーケティング研究における消費者行動の基本的な考え方を解説します。加えて、消費者行動のうち、一つの商品購入に至る最終的な意思決定プロセスに関して、AIDMAをはじめとしたこれまで提唱されているモデルについても紹介していきます。

消費者行動の定義

消費者行動とは、人がモノやサービスを購入して使用するまでの過程の行動のことです。行動とは単に、物理的な行動だけではなく、心理的な変化・動きも含んだ意味として捉えてください。

冒頭でも書いたとおり、「行動」が指す範囲は、人間の生活全般が該当するともいえます。そのため、実際に社会学や文化人類学などの視点から消費者行動の研究が行われたりもしています。

そうしたマーケティング以外の視点が取り入れられてはいるものの、消費者行動の研究と社会学的な研究の違いは、モノ・サービスの購入=消費を軸にして、その前後にある「思考や行動」、さらには「その思考・行動に影響を与えた要因」を分析することにあります。

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消費者行動に影響をあたえる要素

繰り返しになりますが、消費者行動というのは一般的に考えられているよりもかなり大きな視野で消費者のことを考えます。

消費者行動論の研究は世界中で行われており、数多くの論文や書籍などが発表されているため、この記事だけで結論めいたことを論じることはできません。そのため、まずは輪郭を知ることができるように、消費者行動の範疇でどのような要素が研究されているか、下に列挙します。

  • 文化:暮らしている国や地域、属している社会階級
  • 社会:家族(家柄)、友人グループ、同僚、職種(同業者のつながり)、宗教、社会的役割
  • 個人:年齢、ライフステージ、職業、経済状況、性格、趣味、価値観

まとめると、消費者の思想・価値観・アイデンティティに影響を与えている要素はすべて消費者行動の範疇だといえます。

購買行動との違い

消費者行動と似た言葉として、「購買行動」があります。ビジネスにおける会話の中では、同じ意味で使われる場合もあるかもしれませんが、この2つの言葉のニュアンスの違いについても探ってみたいと思います。

2つの言葉の違いについて考える際に知っておきたいのは、マーケティングの現場では明確な定義がされているわけではないことです。

その前提があるうえで、学問としてのマーケティング研究においては、消費者行動と購買行動は分けて使われるケースもあります。その違いを知るために、マーケティング研究の本家である米国における用語の違いを見ていきます。

まず多くの場合、消費者行動は英語でいう「Consumer behavior」の訳語として使われています。冒頭から定義を説明してきた総論としての消費者行動を指しているので、次の章で紹介するAIDMAなどの購買行動のモデルだけを指す言葉ではありません。

繰り返しになりますが、「人々の消費に影響を与える社会、文化、政治といった事柄も含めた、総体としての行動」というニュアンスを持っています。

もう一方の購買行動は、近い表現として「Purchasing decision」という英語があります。ご存知のとおりdecisionは「決定」という意味なので、日本のマーケティング業界でも通じる言葉にするならば、「購買意思決定」といったようなニュアンスが近いといえます。

次の章でより詳しく触れますが、Purchasing decisionとは、消費者行動のうち「消費者がモノやサービスを買う必要性を感じた時点から、実際に特定の商品を購入する時点まで」の範囲のプロセスを指します。

つまり、これら二つの言葉をもし使い分けるとするならば、消費者行動のほうがより広い概念であり、購買行動(あるいは購買意思決定)は、消費者行動の中の一部分についての概念、とすると整理しやすいでしょう。

消費者行動のベースになる理論

ここからは、消費者行動における代表的な“型”について解説していきます。

前章で紹介した文化、社会といった要素が絡み合い、最終的に商品の購入までに至る流れの説明としてよく引用されるのが、「刺激反応モデル」です。このモデルは消費者行動を考える上での基礎的な枠組みになるため、ここで詳しく紹介します。

まず消費者が潜在意識下で(自分でも意識しないうちに)刺激を受けます(図の左)。

ここでいう刺激とは、たとえば幼少期に親族から言い聞かされてきた価値観などが当てはまります。人の観点で見ると、その他にも学校の先生、友人、職場の同僚や上司、憧れる人など、多くの人が一人の消費者行動の“関係者”として登場します。また、前章で挙げた消費者行動に影響を与える要素には人以外のものもあります。たとえば日本人の場合、なぜか欧米のブランドに憧れや良い印象を抱きやすいように、住む土地の文化や歴史による刺激を受けています。

こうした刺激が消費者一人ひとりの心理・思考にも影響を与えます(図の中心部)。

そして、あるとき意識下で(自ら自覚した状態で)モノやサービスの必要性を知覚し、購入に向けた行動をします。この知覚から行動までが反応に当たります(図の右)。この反応の部分が Purchasing decision 、つまり購買行動や購買意思決定プロセスといわれる領域です。

マーケティング実務の現場では、基本的にはこの反応の部分に着目することが一般的です。そのため、どのようなモデルを用いるにせよ、「認知」などのステージから消費者の行動を考え始めます。

しかし実際には、その消費者が生まれてから商品を買う瞬間までの過程すべてが、ある意味での消費者行動だといえます。そこまでマーケターが手を打つことができるかは別として、こうした視野で自社の顧客について分析することは無駄にならないはずです。

特にB2Cと呼ばれるビジネスでは、B2Bよりも感性や感覚による消費が起こりやすいといえます(B2Bは組織的な購買が行われるため、比較するとその傾向が薄い)。そのため、マーケティング業務の中でよく聞く「消費者の心を動かす」ことを考える場合も、ターゲットとする人々の社会や文化といったレベルまで踏み込むことで見えてくるものがあります。

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購買意思決定プロセスと、代表的な購買行動のモデル

上図は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p239より引用

購買行動、あるいは購買意思決定プロセスは、前章で紹介した刺激反応モデルにおける反応の部分に対応します。

これが、このあと紹介する購買行動のモデルや、マーケティングの現場でよく使われるカスタマージャーニーといったさまざまなフレームワークの土台になっています。

このプロセスは、図に矢印が示されているように、基本的には上から下に流れていきます。それぞれのフェイズは次のとおりです。

問題認識

自身の内外からの刺激によって、モノやサービスを利用する必要性、もしくはモノやサービスによって解決できそうな課題があることを認識する。

情報探索

必要性や課題に合致しそうなモノやサービスについての情報を探す。ここではwebなどでの検索だけではなく、広告や過去に類似の体験をしたときの記憶、あるいは友人の話なども含む。

代替品の評価

必要性や課題に合致しそうなモノやサービスの情報が集まった段階で、類似した商品の比較を行う。このときの比較軸は商品ジャンルによって異なったり、個々の消費者によって重要視する軸が異なったりする。

購買決定

検討した類似品の中から最も良いと思えるものを選び、最終的な購買の判断を行う。ここでは、その商品を買ったことによる失敗やリスクがないかどうかが吟味される。想像通りの商品でないかといった機能的な面だけではなく、その商品を手に入れるまでにかかるコストや、あるいはその商品を買ったことによる周囲からの好ましくない声(見栄やプライド)なども含まれる。

購買後の行動

購入した商品を利用したあと、その満足度に応じてさまざまな行動を取る。たとえば知人やソーシャルメディアでのクチコミ、商品の再購入あるいは返品など。

フェイズ間の行き来

図に示したとおり、基本的には順を追って問題認識から購買まで進んでいくのがこのモデルです。ただし実際には、商品の検討途中でもう一度情報探索をしたり、あるいは本当にそれが必要なのかを考え直したりなど、フェイズをさかのぼることもあります。

また、たとえば「お腹が空いた」など繰り返し発生する問題の場合は、プロセスがショートカットされて、いきなり代替品の評価や購買決定に至ることもあります。

さまざまな購買行動のモデルとの関連性

この購買意思決定プロセスについて知っておくと、ふだん企画書を作成する際や見たりするときによく登場するAIDMA、AISAS、SIPS、MoTといった概念が根底では共通していることに気づくでしょう。

これらの購買行動のモデルについては、購買行動とは?9のモデル・フレームワークを解説【マーケター必読】で詳しく紹介します。

それぞれのモデルによって、前提とするユーザーの生活環境やメディア利用のしかたが違うため、時代や自社商品にフィットするモデルかどうかはケースバイケースです。ですが、その土台になった5段階の購買意思決定プロセスを知っておけば、既存のモデルを自社に合わせてカスタマイズすることや、本質を見失うことを避けることにつながります。

まとめ

消費者行動とは、無意識な要素も含めて、個人や集団の生活環境が大きく影響を与えています。そのため、マーケティングは基本的には経営学の一分野ではあるものの、社会学や心理学による研究とも混じり合う領域とはいえ、人々の暮らしや心を観察することがマーケティングの精度を高めることにもつながります。

また、実務の中で消費者行動というとAIDMAやAISASなどに代表されるような、購買行動のモデルのことが思い浮かびます。しかしその前提として、本来の消費者行動とは広い意味での定義があり、記事で紹介したような「刺激反応モデル」や「5段階の購買意思決定プロセス」が現場で使われるフレームワークの下敷きになっていることを知っておくことが重要です。

消費者行動の中でも、購買にもっとも近い瞬間の一つが、店舗内における棚の前です。いつも買うと決めている商品、目を引くパッケージ、あるいは店舗に来る前に見ていたYouTubeやテレビで流れてきたCM。ある棚から一つの商品を選ぶ前には、さまざまな背景があります。

こうした消費者の棚前行動は、これまでは実際の店舗に出向いて観察することしかできませんでした。しかし、コニカミノルタが提供しているショッパー行動解析サービス「Go Insight」では、店舗内に設置したカメラを活用してAIによる顧客行動の分析を可能にしました。

売上げアップにつながる消費者行動の分析の一つとして、ぜひ棚前行動にも着目してみてはいかがでしょうか。

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