AIカメラとは|種類やビジネスでの活用事例(出来る・出来ないこと)を解説

AIカメラとは何か

冒頭でも書いたように、AIカメラとは撮影した映像を解析する機能を持ったカメラのことです。AI(人工知能)によって解析作業で、人間の作業が不要になったことが従来のカメラとの違いです。

まずは、そのAIカメラができることとできないことについて解説します。

AIカメラができること・できないこと(基本的な機能)

できることは撮影と解析

AIカメラの機能は、大きく分けると「撮影」「解析」の2つに集約されます。

撮影機能は、AIを搭載していないカメラと基本的には同じです。ただし、たとえば最新型のスマートフォンのカメラなどのように、顔認証技術などによって自動でフォーカス(ピント)や明るさを調整したり、人の動きを追いかけたりといったことが可能になっています。

また、これは従来型のカメラでも同じですが、解像度や明るさの感度といった性能は年々向上しています。

次に解析機能ですが、AIカメラによる解析はいくつかのパターンがあります

一つは、あらかじめ物体や人物といったデータを登録しておき、そのデータに合致した物がカメラに写り込んだ場合に検知するパターンです。詳しくは活用事例のパートでご紹介しますが、たとえば工場などでの異物検知や、冬場のダムの凍結感知といった用途で利用されています。また、倫理的な問題もはらむので実用には課題がありますが、サスペンス映画で見るような、街中にある防犯カメラで指名手配犯を特定するのも技術的にはこのパターンに入ります。

もう一つのパターンは、写り込んだ映像をリアルタイム、あるいは事後的に分類する機能です。実際に活用されている例として、街に設置されたカメラで通行人の数や密度、性別や年齢層を判断することや、あるいはスポーツの映像を撮影し、骨格や人体各部の動きを解析するような用途があります。

また映像以外にも、画像加工のアプリケーションやソフトウェアでは、取り込んだ写真のうち、人物と背景、さらに背景の中の樹木や空といった特定の部分を自動判別して背景や写り込ませたくない人物だけを切り取る機能があります。これも原理としては技術を応用している機能です。

できないことはアンモラルとデータの解釈

AIカメラでできないことについては、先ほどの指名手配犯の特定と同じように、倫理的な面で政府や業界が自主規制していることと、技術面でできないことの2つがあります。

行政や業界が規制していることとしては、個人を特定した上での映像解析がそれに該当します。

これはAIカメラ(映像データ)に限らず、たとえば交通系ICカードの利用履歴や、携帯電話のGPSなどを活用した人の移動に関するデータも同じです。コンピュータがデータを取得(受信)していても、アナリストがデータ分析をするときには個人が特定できる情報をカットするといった処置がなされています

技術面でできないのは、データの解釈です。

AIカメラで撮影した映像をデータとして蓄積し、人が見やすいようにダッシュボードやリストなどに表示することまでは現在も可能です。

しかし、現時点ではそのデータを目的に応じて人間のように解釈して仮説立てをすることや、改善案を提案することなどは実現できていません

AIカメラの種類

次に仕組みの話をすると、AIカメラには大きく2つのタイプがあります。

1つはエッジ型、もう1つはクラウド型です。カメラ機能とAI機能がどのように連携しているかによって、タイプが分けられています。

タイプ①:エッジ型

エッジ型とは、AIを搭載したコンピュータが、カメラと物理的に同じ場所にあるタイプのことをいいます。カメラ自体にコンピュータが内蔵されているパターンや、カメラの近くにコンピュータがあって接続されているパターンがあります。

エッジとは英語の edge のことで、コンピュータがシステム構成の「先端」にあることから名付けられています。AIカメラでいう先端とは、撮影の工程を指します。

エッジ型のAIカメラでは撮影した映像(データ)がすぐに解析され、もしデータを保存する場合は必要・重要なデータだけをサーバーに送り、保存します。撮影から解析までの間に通信が発生しないため、効率性やセキュリティの面でメリットがあるといわれています。

タイプ②:クラウド型

クラウド型は、AIがカメラと離れた場所にあるクラウドサーバー内に実装されているタイプのことをいいます。2022年1月現在では、カメラに限らず多くのAIがこのクラウド型です。

カメラが撮影した映像は、先にすべてクラウドに送られ、それからAIが解析を行います。これもカメラだけに限らず、昨今はエッジ型AIが普及していく風潮ではありますが、それを実現するための端末(カメラに接続できるコンピュータ)がまだ少ないことや、費用などの面でまだ壁があります。

そもそもAIとは何か

ところで、そもそもAIとはどういったものを指すのでしょうか? 2010年代のAIブームによって、いろいろな分野で「AI搭載」といった謳い文句のサービスが登場しました。

AIが従来のプログラムと違うのは、答えを出すプロセスです。

たとえば撮影した映像に人間が何人映ったか算出する、というシステムがあったとします。

従来のプログラムであれば、プログラムを開発する時点で人間の見分け方(全体のフォルムはどのような形か、足の数はいくつか、目は顔のの中でどんな位置にあるか、どのように動くか…といった条件)を事細かに指示しておかなければいけません。さらにいうと、指示にない行動については実行することができません。

AIの場合は、インプットしたデータによってパターン学習をします。そのため、従来のプログラムのような細かな条件指定をせずに、データにタグ付け(これは人間、これは人間でない、といった分類)をしてコンピュータに大量に読み込ませること(学習といいます)で、自動的に人間がどれかを判別できるようになります。

AIカメラもこの技術を利用して、次の章で紹介するような幅広い分野で応用されています。

ビジネスにおけるAIカメラの活用事例

ここまではAIカメラの基本的な機能や仕組みについて解説しました。

AIカメラには現在、幅広い用途が生まれていますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

街など:交通量データ

コロナ禍になり「人流」という言葉を耳にするようになりましたが、都市部の繁華街などのエリアでは、人の行き来をAIによって分析しています。時間帯別の人の多さや、特定の時期との比較といったデータが、政策やビジネスなどに利用されています。

工場:作業効率・動線改善、検品

工場でAIカメラを導入している事例は多くあります。

たとえば工場内を俯瞰して作業員の流れ(動線)を分析したり、製品の検品工程などで異物や欠陥品を検出したりといった目的に利用されています。

医療:腫瘍の検知

医療の現場では、患者の内視鏡映像・写真などのデータを解析するためにAIが用いられています。これによって高い精度で腫瘍などの異常を検知することができています。

スポーツ:動作分析

たとえばサッカーの試合における、ピッチ上の選手全員の走行距離や移動コースなど、チームとして試合を分析する目的でAIカメラが活躍しています。

その他にも、ジャンプなど特定の動作を行う際の骨格の動きを分析するなど、個人のパフォーマンスアップのためにAIが利用されているケースもあります。

自動車:車線や歩行者など道路状況の検知

国内外の自動車メーカー各社が安全機能として自動ブレーキを搭載するなど、自動車業界でもAIが積極的に利用されています。

進行方向の道路状況や車線などを検知し、状況に合わせて運転者に適切な情報を与えることなどが主な目的です。

スマートフォン:文字認識(翻訳など)

最も身近な例としては、スマートフォンもAIカメラとして活用することができます。

例えばカメラを使った自動翻訳アプリは、カメラで映像認識(文字認識)をし、それを特定の言語に変換して表示するといった仕組みです。

店舗内:ショッパーの行動分析

弊社でも、AIカメラを活用した「Go Insight」という消費財メーカーや小売業へ向けたマーケティング支援サービスを提供しています。

小売業やメーカーの棚割り作成や販促物の効果検証等、店頭でのマーケティングを支援する目的で、これまでは取得できなかった「店舗で商品を購入する前」のショッパー(消費者)の行動をAIカメラが分析します。

これによって、従来では「どの店舗で、いつ、どのくらい売れたか」といった“結果”しか取得できかったショッパーの行動データに、「手にとったけどやめた」「商品に気付きもしなかった」などプロセスのデータを組み合わせられるようになりました。

≫ ショッパー行動解析サービス「Go Insight」の詳しい活用例を知りたい方はこちら

まとめ

この記事では、AIカメラによって実現できることやその仕組やタイプについて解説しました。最後の章で紹介したように、AIへの注目の高まりに連動してAIカメラの利活用も幅広い分野に広がっています。

人間が解析するには膨大すぎて物理的に難しい映像データも、AIを活用すれば非常に利用しやすいデータに変貌します。

マーケティング分野では、店舗におけるショッパーの情報というとPOSデータやモデル店舗での調査などが従来から入手できました。AIカメラを使うことで、実際の買い場・売り場でのショッパーの動きが自動解析され、データとして手に入れることができます。

これによって、商品が購入された/されなかった理由など、プロセスに関する考察の正確性を高めることができるようになりました。

マーケティングにおける新たなデータソースとして、AIカメラの普及率が今後高まっていくでしょう。

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