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ライオンに学ぶGo Insightの効果とデジタルサイネージのこれから~スペシャル対談(後編)~

ゲスト:ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手 弘宣氏
   :株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見 光次郎氏
進行 :店舗のICT活用研究所 代表 郡司 昇氏


ICT技術の向上で店舗の在庫が見える化できるようになり、メーカーと販売店がデータを共有することで在庫回転率を上げる取り組みも出てきた。

中編では、SKUが増え続ける棚割からいかに消費者に商品とメッセージを届けるのか、メーカーの戦略と小売業の見解をお届けした。

後編では、Go Insightの実験結果からみるデジタルサイネージのあり方と、実験結果から得られた店頭顧客行動データをどう活かすかを語っていただく。


目次[非表示]

  1. 1.Go Insightの活用で仮説が立体的に可視化された
  2. 2.店頭での顧客行動に最適なデジタルサイネージとは?
  3. 3.販売店が投資すべきICTとは?
  4. 4.ライオンが考えるブランドのライフタイムバリュー
  5. 5.Go Insightの実験結果を店頭の顧客行動にどう活かしていくか?
  6. 6.まとめ
  7. 7.プロフィール紹介


Go Insightの活用で仮説が立体的に可視化された


郡司

先日、某スーパーと某ドラッグストアで、クリニカとNONIOをターゲットとして、Go Insightを活用して棚前の顧客行動を測定しました。

結果について、どう思われました?


横手

非常に面白かったですね。我々の持ってた仮説が「なるほど~」と証明される部分も多かったですし、測定した結果に対して我々が更にできることが増える。理論上の根拠と実際の行動上の根拠なので、仮説が強くなりますよね。




逸見

理論上の根拠をずっと考えていらっしゃったからこそ、データが生きてくるんですよね。


横手

もちろん仮説を考えるのは仕事なんですけどね。行動上の仮説と検証は、販売店様のなかでの水平展開もできますし、全体で売場効率を上げるための提案にも反映できる話なので非常に面白かったです。


郡司

私もコニカミノルタ様と一緒に仕事をしています。ID-POSだけでは見えなかったGo Insightなどで取得した棚前行動と店内行動を含めて見ていくことで、よりデータに価値が出る。


横手

もともとIDでPOSデータを保有されている企業様であれば、IDベースで他カテゴリとの買上率データはお持ちなはずなので。


郡司

そうですね。買った結果はわかっている。Go Insightに限らずAmazon Goもそうですが、買わなかったが検討した、買った時にすぐ決まったのか、迷って買ったのか…というところがわかると仮説を考えるのに有効です。


横手

Go Insightの考え方を、我々の今の現状に入れ込むことで立体的に仮説ができあがるので、どういうものを作るべきか、どういう情報を発信するべきか、商品を隣接させたほうがいいのか、カテゴリで分けつつ、何を共通化させればいいのか、といった事がとても勉強になりますし、有効だと思います。


逸見

個の企業で踏襲するんだったら、良品計画みたいにアプリ持たせて、チェックインさせて最後レジまで行ったら店内滞在時間を全部見れるわけですし、その間に何を検索しているかも見える。でもあそこまで作り込むのは結構大変ですよね。

しかも彼らの強みはシステムというよりも、後ろのオペレーションがしっかり回ってるからなんですよね。

そこまでできなかったときに、アプリで全部のGPSを追うって理想論だけれども、相当負荷が高いですよね。


横手

僕らのカテゴリでいうと、IoTハブラシでブラッシングの実態は把握できるじゃないですか。ただし、その価値にお客様がどの程度のお金を支払ってくれるかということや、「ただブラッシングデータを計測」されても・・・実際、そこまで知りたくない!というニーズもあるじゃないですか。

マーケティングで扱う領域って、人間の領域がすごく大事だと思います。たとえばデジタルデバイスを入れて、すべてが計測できたとて、その結果のフィードバックの仕方を考えないといけない。

その辺の暗黙的な文脈が、お客様の店頭行動に出ていると思うんですよ。

「どうやって悩んでいるのか?」とか、「店舗でどう行動しているのか?」とかっていうのが仮説に入ることで、顕在化したデータに暗黙的なものがデータとして入ってくる。


逸見

最近デジタルマーケティングで言われているのは、ネット上でコンバージョンが最初100から最終的に3になって、「100人中、3人買いました、良かったね!」なのか、「97脱落した理由は何なんだっけ?」という話になるのかですよね。

これがコンバージョンレートになってくると、3%:97%みたいな話になってきて、「3%も上がったの?すごいよね」って、「普通は1.5%いくかどうかだよね」って議論の時点で間違ってますよね。


これを店舗での100人の接客に置き換えると、「97人怒って帰ったけどいいんだよね」って言ってるんだよねっていう。


郡司

おっしゃるとおり、データで合理的に見ていく話と、そこに人間を交えて見ていく話というのが棚前行動含めて、やっと出てきたのかなと思うんですよね。


横手

今までは店舗の担当者様にいろいろ情報をもらいながら補完していた時代もありましたけれど。


逸見

店舗の担当者もずっと棚見ているわけじゃないので。


横手

だからこそ、こういう補完的なツールがあることで仮説がより立体的になるというのは、まさに感じてることですよね。


郡司

今まで上がってた棚割の話とかパッケージの話とか、店頭での販促物というのがそのなかで

視認されているのかどうか、言ってしまうと競合の販促物もあったりして、どっちへ関心が行くのかすらわかっていくわけですもんね。


横手

そう思います。



郡司

クリニカNEXT STAGEの件で、某GMS(以下、実験店)でA/Bテストをやったじゃないですか。普通の売場に並べたのがAパターンとして、下段にツーフェイスだったのを上段に持ってきて、ゾーニングしたのがBパターンですね。


やはり視認率っていうのは圧倒的にBパターンのほうが上がりました。

新発売をしたタイミングで通常棚割のAパターンは、クリニカシリーズが下段にツーフェイスあって、普通のクリニカから順にアドバンテージ、NEXT STAGEと並べてありました。


Bパターンは、サイネージもあわせて付けていたということもありまして、サイネージをご覧になって、立ち止まられて滞在時間が大きく増加しました。結果として、圧倒的に手に取る方が増えて、当然売上もAパターンよりもBパターンが多かった。


店頭での顧客行動に最適なデジタルサイネージとは?


郡司

サイネージもたとえば、Go Insight エバンジェリストの清水さんが言っている話ですけども、滞在時間に応じたコンテンツにこれからしていくというのも、長短どっちなんだろうと思っているんですよ。

たとえば「6秒から8秒しか滞在しない、だから10秒くらいの動画で伝えないとサイネージを見ないで行っちゃう」という話なのか、「関心のある話だったら20秒でも見るのか」とかね。

とくにハブラシが高機能になったときの話って3分は長いけど、20秒から30秒だったら見るのかなとか。そういうところっていかがですか?


横手

非常に難しいところですよね。


逸見

ですよね、これが見えてきただけにどうしていくんだろうっていう。


横手

もう、デジタル化を前提に捉えるんであれば、本当に短いもので興味を持ってもらって、ネット検索してもらうのが一番早いと思うんですよ。


逸見

でも売場で訴求をするっていうコンテンツとしてですよね。


横手

そういう意味でいうと、アテンションがなきゃいけないので、短いものでインパクトを持って伝えるっていう話だと思います。今の販売店様とのやりとりのなかで言うと、やっぱり商品の理解が深まるものなので、30秒とか1分のものが大半ですね。


逸見

それは長い気がしていて。だからってCMみたいにジングル(ブランドを区別し印象づけるために用いられる短い音楽のこと。 サウンド・ロゴともいう)と、ブランドを連呼するっていうのはまた効かないと思っていて。

まさにさっきのPOPの話の延長上に、どうやってこの製品そのものの効能を理解してもらうっていうストーリーを出すのかっていうのが必要かと。



横手

今回、クリニカNEXT STAGEの動画でいうと、1分程度の製品動画と、別に、この製品をなぜ出したのかという歯科的な研究データに基づく要素があって。

歯周病予防が進んでいくと、年齢を重ねてからも残る歯の本数が多くなる一方、歯が残ると大人になってから虫歯に悩む人が増えちゃうんですよ。その虫歯ができる場所が、ハグキが下がった歯の根元にできやすくなる(根面う蝕)ので、最悪の場合、歯が折れてしまうという社会的課題が、実は10年後、5年後に顕在化してしまうんです。

だから、実は歯の根元をケアすることが大切、という認識を持っていただくことの重要性をPRすることが必要なんです。

結果的に、今放映している動画は1分ものだけです。果たして1分で機能してるのか、短尺の6秒にすれば機能するのかは、正直まだ検証中ですね。


郡司

それはそれでA/Bテストを1回やってみると面白いかも。


横手

全部のコンテンツではやりきれませんが、こういう代表商品に関してはそれこそ本当にネット用、テレビCM用とか、何パターンかの素材が必要なのかなって。


郡司

私はサイネージ会社のお手伝いもやっているので、そこで言わせてもらうと、ひとつのメッセージごとの区切りでいろんなメッセージを番組編成で回していくのが一番いいと思っています。

たとえば「フッ素の効果」っていう10秒程度の短いコンテンツを作って、それが終わったら次はこのハブラシ、「力の入れすぎはハグキを傷めるんですよ」っていう話。もしくは、「ハグキを磨くのにちょうどいい力加減」みたいな話があったあとに、「それを解消するのはこれです」っていう見せ方とか。

一旦切ってどんどん回していくっていうやり方が本当は一番効くと思っています。


横手

イメージはそれですね。


郡司

ただ、検証してみたことはないので、検証してみると意外とロングなもののほうが効くのかもしれないし、アイキャッチでパッパッパというので立ち止まってもらっても一番効果は出るかもしれないし、それはやってみないとわからないですね。

だからもし機会があればその辺でA/B/Cテストをやってみると面白いかもしれないなっていうのもあります。

ちなみに今回の実験店で、消費者の売場の滞在時間は平均40秒ぐらいでした。



逸見

2階にわざわざ買いに来てるっていう話と、1階での購買は、滞在時間って変わってくると思うので、今回は特に選んでくれた人だと思うんですよね。

1階の人にどう見てもらうのかっていうと、少し減るのかなと思うんで、今の郡司さんの話ですよね。


たしかイオンでサイネージとしてイオンチャンネル入れたのは2009年くらいですけど、ありもののコンテンツで回そうってまず取り組んだので、なかなかレジ待ち客に注目されなかったですよね。


今は動画編集も早くできるようになってきたし、そういう制作技術自体はそんなに大変じゃない、それよりもメッセージ性の話ですよね。

それをどうグルグル回していって、たとえば10本構成で来店頻度がスーパーで週に2回だとすると、そこの前を定期的に通るんだとしたら、一か月半は同じシリーズで回してみようとかですね。

そのなかでのどこのタイミングで、流しているものをサーバー管理しといて、どのタイミングの動画が一番見られているのかって、見たいわけですよね。


横手

そうそうそう。


逸見

最終的にはID-POSと連動して購買まで見ることもできるよねって。


横手

デジタル広告のリアクションを検証して、いいコンテンツを店頭に応用するっていう考え方もあるので。そういう変化対応というか、柔軟に適応することの重要性は増していると思います。


郡司

YouTubeを見ている生活シーンと、店頭での買物シーンって違うじゃないですか。なので、必ずしもそれが通用するかどうかも、これも検証してみないとわからないですよね。


逸見

Webの検索で見えているものっていうのは、購買以外に本当にいろんな理由で見たりしているので、事実かっていうとちょっと違う気がするんですよね。

でも店頭でそのものを見ているっていうのは、「本当に見ている」という瞬間。


郡司

さっきの滞在時間の話ですけど、以前にドラッグストアで検証したときは、BパターンでNONIOをゾーニングしたときで平均滞在時間が34.7秒です。その前は、31秒くらいだったので、サイネージなしのゾーニング変更で3秒以上長くなった。


逸見

これが果たしてGMSの2階という、「時間をかけて選びましょう」というシーンだから長かったのか、サイネージがあったので長くなっているのかっていう。


郡司

あと、買い物の時間にもよりますよね。昼前後の話と夕方と。


逸見

それって棚前の滞在時間ですよね?


郡司

そうです。私は自分でも日常生活の買い物を昼も夜もしています。顧客行動を見ていると、夕方買い物しているときには、そもそも時間がタイトななかで買い物している人のほうが多いですし、レジが混むから早く買い物しようっていう話がでてくる。

日中買い物していると、それはあまりないので、14時前とかだと滞在時間は長くなる。

時間別の割合がどうしても見てみたいと思っているので。


逸見

時間帯別の滞在時間も出ますよね?


郡司

そうですね、ただし、1店舗の計測で曜日×時間別にするとn数がきつくなるんですよね。

そこを耐えうるn数なのかどうかでいうと、傾向値として見ていただいた方がいい。


立地とか時間帯によってお客様の可処分時間が大きく変わってきます。

店ごとに、ここで何分使うのかって変わってくるので、店頭で見てたら結構顕著じゃないですか。


逸見

確かに。土日のゆったりした時間などは長めのコンテンツでじっくり説明をして、日中の忙しそうな時間っていうのは6秒くらいの動画でパッパッパってやってくっていうのもやり方ですよね。


郡司

そうですよね。実際にデータで見れるようになると、滞在時間の意味っていうのが変わってくると思うので。

その辺が今までWebだとデジタルで全部取れていたものが、今回アナログの店頭でそれで実際に見れてくると、結構面白いなと思って。


横手

面白いですね。


逸見

一例ですけど、成田空港の三省堂書店に勤務していたときって、お客様の9割はビジネスマンなんですよ。朝の7時半から8時半くらいが目が回るほど忙しくて。その間はとにかくレジも打てないんですね。商品ひたすら渡して釣銭返して、一息つくたびに10件ずつレジ打ち込むくらい。


だから頭のなかで「週刊文春何冊売って」とか、文庫のスリップを全部胸ポケットに入れておいて、あとは全部まとめてPOS打つんですよ。


郡司

今それはやってないですよね?

駅前のドラッグストアも昔はそうでした。ドリンク剤1本持って150円投げていく…みたいな。


逸見

そのときに思ったのが、その時間帯に買っている人はとにかく早く通過したいんですよね。とくに海外に行くから、1時間半前に来ていて、なるべく早くゲート内に入って行きたいっていう。

それが今度は10時半から15時くらいの間はゆったりと出かける人が増えてくるわけですよ。そうすると、みんなのんびり店舗で見ていくわけですよ。

15~20坪の店舗に30分以上滞在してみたりとかね。だからお客様の時間ってまったく変わってくるんだなっていうのをずっと見てたので。“ここと合わせたコンテンツ”みたいな話だとか。


さすがに棚は変えられないじゃないですか。昔から小売は「棚を変えたい」って言うんだけど、それはあまり現実的じゃないと思うんですよね。変わったら長く利用されているお客様が見つけられなくなるから。

それよりも、そこで訴えるメッセージを変えられるっていうほうが効くのかなと思っているので。


横手

本質的にはやっぱり今はそういう時代ですよね。


逸見

はい、それがサーバー配信でスタンドアローンじゃなければ、タイミングまで見れてくっていう話ですよね。


郡司

店頭でこれ表現できていないよねっていうところにちょっと戻っちゃうんですけど。

Web連動してという話だと、私が全社マーケとEC責任者やっていた頃、薬剤師をはじめとした専門家に粗利とか売行きを無視して、特徴のある商品だけピックアップしてもらって、「これがこれに良いのはこういうことですよ」っていう説明をつけていったんですね。


「なんでフッ素が虫歯予防にいいの?」っていうコンテンツがあって、たとえばクリニカのフッ素メディカルコートに関しては、「フッ素成分がこれだけあって4歳から使える」みたいな話と、「ハミガキにこれを組み合わせることで虫歯予防に良いですよね」みたいな話だったりとか、他社品ですけど「研磨剤は無添加でハグキに優しいハミガキ粉もありますよ」みたいなのとか。


逸見

そもそもお客様のなかでOTC(Over The Counter:薬局・薬店で購入できる一般用医薬品のこと)のハミガキ粉があることを認識しているのかどうか。


横手

消費者はOTCかどうかはわかっていないかもしれないけど、今までよりも医薬品の商品もオーラルケアの売場に全部並ぶようになってきましたので。


郡司

デントヘルスとかも、昔は口内炎・歯肉炎の医薬品としてレジの後ろにあったんですよね。


逸見

そうですよね、言わないと出てこない。


郡司

まさにオーバーザカウンターだったんです。

で、フッ素の説明。「フッ素が不安だ」っていう人がいるので。


逸見

いろんな都市伝説もありますからね(笑)


郡司

なので、「フッ素がちゃんと安全なんだよ」っていうコンテンツをWebで書いて、そこまでの情報量は当然店頭で表現できないので、店頭で表現できないものをWebといかに連動させるか。そういう話だと思うんですよ。


逸見

どうするんですか・・・。2次元バーコードで飛ばす?


郡司

たぶん店頭で「QRをスキャンしてくれ」って言ってもやらないので。


逸見

そうそう、厳しいと思ってます。


郡司

それこそ店頭タブレットみたいなもので見れるっていうのには、本当はこういうコンテンツが一番いいと思っているんです、本来は。

だけど、実際は不思議なことやってるんですよね。店頭の役に立たないタブレットとか健康クイズを喋るPepperとか置いているのだけど、置くことが目的になっている。


販売店が投資すべきICTとは?



横手

販売店様にとってインフラ投資は大きな課題ですよね?



郡司

大規模チェーンは店舗数が多いから稟議が大変なんですよ。たとえば1台2万5千円だとしても、1,000店舗にたった1台でも入れると2千5百万円だよねっていう。「2千5百万円の投資いいの!?」みたいな。1台は部署稟議だけど、1,000台は経営会議で。


横手

なるほど。


逸見

そういう話になることが多いです。やばい、キタムラで3,000台投資しちゃった!

1年で回収しましたけど(笑)


郡司

そうなんですよね、そこなんですよね。


逸見

裏付けですよね。

さっきの3,000台は、もともと最初1,000台入れました、そこから取り寄せオーダーが前年比で15~20%くらい上がりました、イコール数億円売上上がってます、粗利10%で見ても1億以上増えてます、すると「もっと投資せい!」って話になるわけですよね(笑)


郡司

でも、キタムラのケースは直接販売に繋がるわけですが、店頭の情報補完ツール限定で考えたときに、実際のところそこまで直接の効果は出ないわけじゃないですか。

直接の効果は見えにくいけど、お客様は絶対選びやすくなるよねっていう。


横手

そもそもPOPの電子化のときも、一気に進みそうでそこまでは進まなかったじゃないですか。

それこそGMS業態では浸透していますが、多業態ではなかなか進まなかったのはなぜですかね。


郡司

人件費の中身が見えていないのが一番問題だと考えてます。

今日たとえば40時間分従業員が働いていて、人件費が5万円かかったとします、っていうのは見えているんですよ。

なんだけど、5万円の中身が何に使われているか?補充に使われているのか、レジに使われれているのかっていうのを分解できていないので。

なので、たとえばプライスカード差し替えるみたいな作業にいくらかかってるっていうのを、ちゃんと計算する人が非常に少ないっていうのはあります。


今回の消費税増税みたいなのがあると、当然全店舗プライスカードを入れ替えるので、そういうときは大企業は事前にサンプルで作業計測するんですよ。それすらしない企業も多いですが。

要はトータル何時間かかるから、月次のワークスケジュールとしてこういうベースで組み込むっていう感じで。

そうなると、初めて科学的になるんですけど、日々の入れ替えみたいなのって手間だと思っていないんですよ、多くのドラッグストアは。


スーパーの人は、キャベツや魚の仕入れ値って毎日違うじゃないですか。売価も毎日違うじゃないですか、そういうのを差し替える手間がめんどくさいっていうのは明確にわかっていて、数字化はできていないにしても大変なのはわかってるっていう。なので、電子プライスカードにしたいっていうことで、生鮮食品はやっぱりニーズがある。


横手

なるほどですね。


逸見

キタムラのときは、EC事業部員70人全員に、週間のスケジュールを30分単位で書き出させて、そのあと面談して、「この作業いらないよね」「これはあそこと重複しているよね」って。「この作業減ったらラクじゃない?」ってシステム化しました。

そうすると本当に作業が減って、ラクになっていって、ていう。


郡司さんが言ったとおり、それが見えていないと固定費に対する効率の話が出てこないんですよね。

そうすると代わりにインフラ投資をして、何かの作業が減ったからどうか、っていう1個のマネタイズは見えるんですけど、総人件費とか、総コストに対するものが見えないと、経営者は「うん」って言えないよねっていう。


郡司

そうですよね、スーパーのプライスカードの差し替えは、どこのスーパーから見ても明確な課題なので割と手をつけやすいけど、ドラッグストア・コンビニのプライスカード差し替えって、さして困っていないので投資が起きない。

最近だと家電量販が結構電子プライスカード入れ始めているじゃないですか。あれはもう完全にAmazonからのEC化率アップの流れで、売価をどんどんあわせていかないと。


逸見

ダイナミックプライシングですよね。


郡司

ダイナミックプライシングというか、ダイナミック値下げですよね。


逸見

ダイナミックプライシングの話とデジタルの値札の話が混ざってくると、作業効率の話をしているのか、価格を揃えないとっていうマーケティング要素の話をしているのか。

しかもどう考えたって、今ダイナミックプライシングは顧客にとっては不利ですよね。圧倒的に顧客側に情報が少ない。

とすると、導入がおかしな話になってくるので、あれ分けて欲しいと思ってるんですよね。

本当にプライスカードの紙を差し替えるあの作業効率を考えたらデジタルだよねっていう。

昔全部測定して、「やっぱり紙だよね」ってしばらく紙残してましたからね。


その代わり、週末セールで、ネットのセールと店舗のセールを同時に土日に合わせて展開して、差し替えを1回で済むようにするっていうことまでやって、業務オペレーション上の効率化まで踏み込んでました。


郡司

そこまで見ている会社って少ないので。

とくに日頃オペレーションを作業単位で分解して、作業の費用対効果、時間とコストで管理しているところが少ないので、結果的にデジタル化をしたときにどんな効能があるのかが判定しきれていない。だから迷うっていう。


1個1個いくらベンダーさんが安く下げていっても、そこの話じゃないんですよね。

1千万が5百万になりました、それは安いね。「でも」ってなっちゃうんですよね。

社内で投資効果がどうしても理解できないからですよね。


逸見

さらにもうひとつ、以前郡司さんも言ってましたけど、レジにだれが入っているか全部見れるようになっていく。


それと店内行動がカメラで見えてくると従業員の行動も見えてくるので、別に紙の表を記入してもらわなくても、だれが何に時間をかけているかが見えてくる。

そうするともう少し進むのかな。

今までは「サボってないか!」みたいな話がメインだったんですけど、いよいよ人が足りなくなってきて回らないからやらなきゃいけないっていうのが増えてくると思うので。

そうするともう少し店頭へのデジタル機器の投入が増えるのかなと。



郡司

今の流れで本題の話に戻すと「陳列をちゃんと直しましょう」とか、「本部指示通りに棚割をちゃんとやりましょう」「販促物をきっちり付けましょう」という作業に対する作業時間指示をしている会社って割と少ないと思っていて。ちゃんと・きっちりの基準化。


その作業時間がこれだけかかるから、これをいつどこにやってくれ、だれがやった、それのチェック行動がその人の評価だよ、みたいな話につながってくると、初めてちゃんと売場ができてくる。それも先ほど言っていたような、従業員も含めた作業の計測ができてくると、それを活かしてやるべきことにちゃんと時間を投資する。ていう考えになるのかな。


現状はどうしても手すき時間になっちゃうんですね。「モノを出す」「レジを打つ」「お客さんを待たせない」っていうのを、どれももちろん優先事項なんだけど。


逸見

「空いた時間でフェイスをきれいにしよう」とかね。


郡司

そう、「空いた時間で」っていう発想が絶対良くないんですよね。空いた時間があっちゃいけないんですよね。

思考停止せず、何をこれだけやらなきゃいけないよねっていう。


逸見

「空いた時間でブログを書こう」って言ってもだれも書かないから、ブログを書くことを業務にしたんですよね。

月に1回全社会議で経営陣が全店舗のデータを見て、「なんでここは前月に比べてこんなにブログ書けていないんだ」とかつぶやくわけですよね。下手な評価よりも相当効きますよね。

で、その業務に対して、今度は効果測定がはじまって、何人が閲覧をしていて、そこから来店をした人がこのくらいいるんじゃないかっていう仮説も出してきてっていう。


あらゆるものが測定されて、「監視されてる」ってみんな思うんですけど、それよりも自分の作業が多くなっている部分をどう減らすのかって。

結果的になんとか8時間で収まるように、全社の作業を減らすというなかで、このデジタル化という要素はとても大きいと思っているので。


目的を共有するとパートさんが「システム入れたから、私この曜日は1時間空いたんです」って。「だから毎週大変そうなあそこの作業をこの時間に助けに行きたい」とか言い出すわけですよね。でもそれがあるべき姿と思っています。


別に監視をするためにやっているわけじゃなくって、どう全体を見て作業を減らしていって、本来人ができることに注力をしていくのか。

小売とメーカーっていうギャップも、見える化することでどう埋めていくのかですよね。


「お互いデータを売り買いして儲けよう」という話ではなく、データを共有化することで、どれだけ最終消費者にアプローチする機会を増やしていくとか、それこそ欠品を減らすとかから始まって、最後サイネージの情報をどうコントロールしていく、みたいなところまで。うまく伝わっていくと、限られた面積と限られたSKUと限られた固定費のなかで販売が増えるはずですよね。


そうやってライフタイムバリューを上げていくストーリーにしていかないと、現場の頑張りだけではもう対応できないと思っているので。


ライオンが考えるブランドのライフタイムバリュー


郡司

ライフタイムバリューという考え方でいったときに、ブランドのライフタイムバリューってどういうふうに捉えてますか?



横手

これまでは、ライフステージごとに症状やニーズが変わることを前提としていました。要するに40~50代になったら歯周病リスクに対する意識が高まり、ハミガキ粉に対するニーズも変化するものだと。ライオンとしてのライフタイムバリューでは、クリニカからシステマとか。システマからデントヘルスのようなブランドスイッチです。


逸見

わかりやすいですね。


横手

おっしゃる通りわかりやすいんですよ。ただし実際のお客様の行動ではそうとは限らないのです。


やっぱり「クリニカの香味が好きだから!」とか、「ちゃんとケアしているんだから、歯周病ではないという自覚」とか、実際の購入データを見ても、クリニカの購入してくださる方には、50~60代の方も多いんです。

そう考えたときに、ブランドの提供している価値観のファンとしてひとつのブランドに寄り添っていただくライフタイムバリューの描き方もあると考えています。最近システマだと30代の方向けのシステマEXと、50代の方向けのハグキプラスもあるし、クリニカだとアドバンテージとNEXT STAGEっていうものがあって。


つまりクリニカでいうと「予防歯科」という概念のなかで、お客様のライフタイムバリューを維持していく考え方に変わりつつあります。


郡司

だから必ずしも単純なアップセルじゃないんですよね。

アドバンテージの人がNEXT STAGEになって欲しいという話じゃなくて、これ+これで、歯間+アドバンテージで足りない、もしくはそれよりもこれについて良いものが欲しいっていうときに初めてNEXT STAGEっていう話ですよね。


逸見

症状ベースだとセグメンテーションされた塊になっていくんですけど、こういう話になってくると個の判断の話になってきますもんね。


横手

そうですね。

やっぱり自分の好みと価値観に従って、今まさに郡司さんがおっしゃったように、あるタイミングからもっといいもの使おうかなと考えられます。で、そこに自分にあった選択肢がちゃんとある。


郡司

ハミガキ粉が難しいなって思うのが、家族で同じのを使っちゃうケースが多いじゃないですか。そこですよね。シャンプーもそうですけど。


横手

ありますね。

そういう意味では、結構変曲点があって。家族で買ってたものからはずれる瞬間ってあるんですよ。そこをどう捉えるかは、大切なアクションですね。


郡司

家族が1SKUでやってたものが、どこかで分岐したいっていうときに、じゃあこれはパーソナルで使ってる人が出てきたっていう話ですよね。


逸見

今、会員カードって1つの家に1枚ですけど、絶対個人にしたほうが面白いと思っていて。

そうするとそれに対するおすすめっていう話も出てくるし、世帯で買ってるのか、個で買ってるのかっていうのが1回ではわからないものが継続すると見えてくるじゃないですか。


横手

そこはおっしゃったポイントですね。

たとえば1IDでも何本か買っていれば、なんとなく属性が見えてくるし。


郡司

「子どものハブラシはこれで、私のはこれで、お父さんは安いからこれでいいわ」っていう。


逸見

そうそうそう、絶対そうなる。


横手

それこそ、ハグキプラスのようなNEXT STAGEもそうですけど、「私のはこれだけど旦那様のは別」だとか。


郡司

「私のはクリニカNEXT STAGEだけど、旦那のは口がちょっとあれだから口臭対策のNONIOにしておこう」とか(笑)


横手

そういうのも、データを見るとわかるんで。

そういうところですかね。今ライフタイムバリュー的に考えて。



郡司

ひとつ伺いたいんですけど、そういうブランドを、いわゆるデジタルで訴求していくのか、アナログっていう言い方が正しいのかはわからないんですけど、店頭含めた4マスみたいなところのデジタルで伝える話っていうのを、横手さんはどういうふうにイメージされてます?


横手

やっぱりデジタル化へのシフトは変わらないと思います。

ただそれが0:100になるとか、一気呵成にということはないと思います。

我々データだけでは捕捉できていない、多くのエリアにお客様がおられますので。


郡司

そうですね、幅広い市場シェアを持っていらっしゃるから。


横手

すべてのエリアを含めてビジネスを見ないといけないので、すべてがデジタル化するか、というとそうではないですね。


ただやっぱり買物行動として、よりパーソナルな価値提案が求められているという課題感は変わらないです。たとえば、都市店の若年を狙うんだったらデジタルでパーソナライズをやればいいし、まだまだECが浸透していない地方圏の都市だったりすると、店頭を通してパーソナライズをしていくべきだと思っています。


郡司

ありがとうございます。

最近小売業に限らずメーカーさんからも相談されることがあって、そういう悩みをたくさん聞くんですよね。

なぜかやっぱり0:100を考えちゃう人もいたりとか。今おっしゃったみたいにエリアによりとか、もともとの浸透度合いによりとか。あと世代によりっていう、当たり前の区切りをちゃんとつけてくという話ですよね。その仮説を作ったうえで。


横手

そう思いますね。私は。


Go Insightの実験結果を店頭の顧客行動にどう活かしていくか?


郡司

最後に一言。店頭顧客行動にどう活かしたいかというテーマで。



横手

そういう意味では僕の場合は、データで顕在化している部分と、より人間的な暗黙的な要素をあわせ持った解釈こそが本物だと思っているので、そういう意味では店頭での行動を可視化していくことは重要性は増していくだろうと思います。



逸見

横手さんの話には全面賛成のうえで、私が今まで25年小売やってきて、内20年はECとかデジタルを並行してやってきたなかで思うのは、道具がどんどん進化してきて、データが本当に取りやすくなったということ。取りやすくなったというのは機械も安くなったし、データの処理も早くなったし。


だから「このブランド・この商品との紐づけを見ていきたい」だとか、「お客様の顧客行動から、ライフステージやライフサイクル、ライフタイムバリュー的なものを見ながら接点を見ていきたい」、「チャネルとの接点を見ていきたい」という、きちんとそういった仮説を立てたうえでの顧客行動が、今は本当にどんなデータも取れて分析できるようになっているので、もっと積極的にそこの仮説を立ててアプローチをしてほしいと思いますよね。

それは小売であれ、メーカーであれですね。


書店からセブンネット入って、サーバーで一週間分の全アイテムのクリック数とかが見られるようになって、「これ最高にすげー!」と思ったんですね。

書店店頭だとお客様が手に取ったのをたまたま自分がレジで見てるときしか見れないわけじゃないですか。あの本何回手に取られたみたいな。それが全部見える!


費用対効果の計算しやすくなってるとか。

仮説に対する実験がやりやすくなってるっていう話ですよね。こういう道具がもう少し出てくるといいなーと思います。


まとめ

後編では、Go Insightの結果から店頭の顧客行動にあわせた最適なデジタルサイネージのあり方、販売店がICTに投資する意義・考え方。そしてライオンが考えるブランドのライフタイムバリューまで話が及んだ。


デジタルの進化にあわせて、マスからユニ(個々)へいかにブランドを認知させるか、そのときの売場の役割は、ただ買う場所から認知をさせる場にも変わりうる。


販売店としても、ICTの活用次第で、併売率を上げるという売上だけでなく、在庫回転率の向上や人件費の抑制など幅広い活躍が期待できる。


プロフィール紹介

ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手 弘宣氏

横手 弘宣
ライオン株式会社 ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー

2000年ライオン株式会社入社。
営業を6年間経験後、マーケティング本部へ。
マーケティング本部では、掃除用クリーナーである「ルックブランド」の担当として「まめピカ」・「おふろの防カビくん煙剤」などの開発を担当。その後2年間、実務を離れてMBA留学へ。卒業後、現職に着任。現在は、クリニカを中心とした複数のハミガキブランドのブランドマネジャー。


株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見 光次郎氏

逸見光次郎
株式会社CaTラボ 代表取締役 オムニチャネルコンサルタント

三省堂書店店頭勤務、ソフトバンク イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)立ち上げ、AmazonジャパンBooksMD、イオン事業企画(ネットスーパー立ち上げ)及びデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ 執行役員EC事業部長、同オムチャネル(人間力EC)推進担当を経て独立。ローソンマーケティング本部長補佐、千趣会執行役員マーケティング担当を兼務。
現在は独立して、経営と現場、ITと営業、顧客と企業の繋がりを重視した全体最適のコンサルタントに。継続的な利益と顧客満足を重要指標とし、経営戦略立案からオペレーション改善、IT設計まで行う。
プリズマティクス社アドバイザー、GMOメイクショップオムニチャネルスーパーバイザー、流通問題研究協会特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役コンサルティング部門統括を兼務。


店舗のICT活用研究所 代表 郡司 昇氏

郡司 昇
店舗のICT活用研究所 代表

1999年株式会社ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。 
2007年セイジョー入社。調剤事業部課長→営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年株式会社ココカラファインOEC社長就任。2016年株式会社ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。
 2018年4月~現職。ITベンダーの持つ最新技術をどのように小売業で価値を持たせていくかをベンダー、小売業双方の三方良しを実現する手助けをしている。

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