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ライオンに学ぶ店頭で映えるパッケージと販促物~スペシャル対談(中編)~

ゲスト:ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手 弘宣氏
   :株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見 光次郎氏
進行 :店舗のICT活用研究所 代表 郡司 昇氏


ICT技術の向上で店舗の在庫が見える化できるようになり、メーカーと小売店がデータを共有することで在庫回転率を上げる取り組みも出てきた。

中編では、SKUが増え続ける棚割からいかに消費者へ商品とメッセージを届けるのか、メーカーの戦略と小売店の見解をお届けする。


目次[非表示]

  1. 1.パッケージから伝わる情報次第で“売上インパクト”が変わる
  2. 2.単品販売から併売による売場の効率化
  3. 3.デジタルでメーカーと販売店の融合を目指す”ハグキチェッカー”
  4. 4.SKUの多さに棚割が限界に来ている
  5. 5.プロフィール紹介


パッケージから伝わる情報次第で“売上インパクト”が変わる

株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見光次郎氏


逸見

棚とパッケージは連動する話ですよね。お客様は棚のなかでパッケージを見るわけですからね。

パッケージによって売れ行きって変わるのですか?


横手

そうですね。結構変わりますね。


逸見

これは小売の側から聞いてみたかったことなのですよね。

お客様が名指しで商品を探しているときは、「これを探してる」って聞かれると「これですよね」と案内はしますけど。そうじゃなくて、お客様がふらっと来てものを選んで買うときのパッケージの効果ってとこですよね。


横手

そういう意味では、ハミガキとハブラシでも結構違って。

ハミガキだと、買うまでの時間は相対的に短いことがデータでわかっているんです。

なんでかと言うと、「味覚や期待する効果」に加えて、自分が使っていておいしいかどうか、という要素がとても影響するからです。


逸見

口の中ですからね。


横手

一方でハブラシは、アイテムも多いですし、毛の硬さとかヘッドの大きさなどの指標も考えないといけない。歯医者さんのおすすめとか。

だから、購入までの時間が長いわけですね。

そういう意味では、パッケージから伝わってくる情報の影響力はすごく大きくて、店頭で見て、機能がわかりやすいかっていうのは、売れ行きには大きく影響しますね。


逸見

機能を全面に出したら売上にインパクトありますか?


横手

コピー1個でも大きく影響しますよね。

マーケティング的に言うといろいろな表現があって。

「ハグキをマッサージ」と言うのか、「歯周病予防」と言うのか、それこそ「やわらかい」とか「優しい」とか。感性ってユーザーによって全然違うので、自分たちのユーザーがどこに一番気持ち良く買ってくれるところがあるのかという。


逸見

カメラのキタムラにいたとき、新製品のカメラが出ると、その紹介動画を社内で作っていました。

そのときのポイントが、横手さんのおっしゃることとまったく一緒で、「スポット16点測光」とか言われても普通の人はなんだかわからないわけですよね。

「これをどうユーザー向けに解釈した言葉に置き換えるのか」というのを、小さいパッケージで伝えるって結構難しいんだろうなと思って。


横手

やっぱりですね、ハブラシは圧倒的にパッケージの面積が小さいので、一番悩むんですよ。


逸見

ここですよね。書くところっていうか、正面から見えるところですよね。

クリニカNEXTSTAGE


横手

このクリニカNEXT STAGEというハブラシは、ブラッシング時に力を入れすぎると、ネックが曲がって音でお知らせするハブラシなんですけど、「曲がる」と言ったほうが良いのか、「音が鳴る」と表現することが良いのか、それこそ「ハグキに優しい」って言うのが良いのか、かなり検証して、結局やっぱり「音でお知らせする」という独自の機能を伝えれば、「あ、だから優しく磨けるんだ」とか。


郡司

なるほど、機能伝達が訴求ポイントに入ってくれるわけですよね。


横手

この商品は何パターンも試しました。我々にとっても、店頭で理解してもらうことが難しいと思っていた商材です。

販売店様が「見本を陳列したい」と要望していただく商材ですね。


逸見

触ってみないとわからないところですよね。


横手

確かに見本は有効ではあるのですが、そこに店頭でしっかり見本を並べ続ける、という実現可能性の課題が出てきて。

見本をご用意しても店舗に送ったけれど使われないとか、全然違う場所にかかっていることもある。


逸見

じゃあ営業さんが全部店に行って勝手に付けるかっていうとそうもできないし。


横手

そうなんですね。

そういう意味では、まさにこのクリニカは、自分たちにしかない機能に、一点突破型のコピーを採用して、おかげさまで、我々が思っていた以上に売れています。


逸見

もうひとつ小売側にいて気になったのが、シリーズものとか、もしくは関連するもの。たとえばハミガキとハブラシ、オーラルケアみたいに大きく3つ分かれるわけじゃないですか。そのときに共通のメッセージで想起してほしい、みたいなパッケージのデザインってあるのですか?


横手

たとえばクリニカだったらロゴマークですよね。

歯を見つめるマークであったり、予防歯科というコピーですよね。


逸見

今まで安く、たくさん売るハミガキのラインナップに入っていたものを、“高機能化”していくなかでのメッセージというストーリーになっているわけですよね。


横手

そうですね。我々としても、そこはこだわってやっています。


逸見

ストーリーを付けるものと、そうでないものとをはっきり分けていく。全部にメッセージが出たらうるさいですものね。


横手

単品売りの商材ももちろんあっていいんですけど、我々の商材のいわゆる課題としては、アイテムの併売。

単品の単価を上げることはもちろん、やっぱりアイテム購入点数を増やして、お客様にとっては自分のお口に合ったケアができるというベネフィットを提供するとともに、販売店様にとっては、売場の効率が上がるというメリットがある。そこが重要かなと思います。



単品販売から併売による売場の効率化


逸見

キタムラでカメラを売っていたときの話で、とあるメーカーのデジタルカメラだったら当然そのメーカーのメモリーカードを入れたほうが相性は良いんですよ。もともと新製品開発時に自社のメモリーカードで全部テストをしているので。

でも売るときには別売りしちゃうわけです。

知らないからほとんどの人は価格の安い別メーカーのメモリーカードを入れちゃう。本当は、同じメーカーで組み合わせたほうが良いのに。


横手

そういう意味では、予防歯科っていう概念とか、歯医者さんと考えている設計に合ったものしか我々は販売しないので、その辺の思想観がお客様に伝わっているのはあるかもしれませんね。


ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手弘宣氏


逸見

そうだと思います。

先のメーカー例ですが、そのメーカーのコアなファンが多いから、本当は全部同じメーカーで統一したいはずなのに、安いメモリーカードを一緒に買う人がいっぱいいる。

安いメモリーカードが悪いというわけじゃないです。なんで同じメーカーを買わないのかなって。

店頭での押し出しも弱かったり、セットでのパッケージデザインも違っちゃったり。

だからセット販売で、おっしゃるとおりパッケージでメッセージがちゃんと伝わっていたら、ですよね。


予防歯科っていう概念がきちんとあるから、そのなかでクリニカっていうものを想起してもらって、その2つがつながっているところで併売、一緒に買っていこうっていうストーリーになるわけですよね。


郡司

併売という点ですと、クリニカNEXT STAGEというハブラシと組み合わせて使うハミガキ粉が、同じライオン製のデンターシステマならあり得ると思うんですよ。クリニカと組み合わせるハミガキ粉が別メーカーの低単価品であるってことは、まあないわけですよ。


高機能をうたっているクリニカのハブラシに合わせて、低単価なだけのハミガキを買う人はほぼいないですよ。Go Insightのデータにも表れている。ロングセラーで低単価なのだけど機能性も低いハミガキ粉は、買う時間も本当に数秒なんですよ。


逸見

「とにかくハミガキ粉があればいい」という人たちが低単価な商品を買うわけですね。それもなんでそうなるかと言ったら、「とりあえずハミガキ粉使って、歯を磨いたら良いんだよね」というところに、予防歯科の話がちゃんと入って、高いと言っても298円と98円だったら、実際200円しか違わないわけじゃないですか。


郡司

価値の差は200円よりも大きいということを、言いたいけど言えない。


逸見

そうそう、言えない。

1日で200円なら大きいけど、ハミガキ粉を買って298円で家族4人で使っても、1か月は使うわけです。その200円の差で、歯医者に少しでも行かなくて済むとか、半年に1回の検診で済むから、お金が浮くんですよというのは、はっきりとは言えないけれども、この予防歯科っていう言葉のなかで本当は伝えていきたいわけですよね。


横手

そうですね。

どちらかと言うと、我々は、定期的に歯医者さんに健診に行くことが重要だと思っていて。予防のために通院するほうが、健康管理上の健康保険料が安くなるっていう研究データが一部報告もされているんですよ。


予防に投資することが非効率じゃないということは、会社全体としてアピールしていかなければいけないことかなと。オーラルケア商品もそうですし。


ただ、やっぱり我々の提案に対してニーズは二極化するので、ホワイト&ホワイトを買い続ける方々もいらっしゃって当然ですから、双方の商品をしっかり持っておくってことが、我々オーラルケアのNo.1メーカーとして、一番重要なことかなと思いますよね。


逸見

この二極化が難しいですよね。収入のあるないとか、そういう話じゃない二極化だと思っているので。


横手

オーラルケアに対する相対的な財布の取り合いなので。


逸見

本屋のPOPって平台に3枚くらい立っていると、むちゃくちゃ効果があります。

昔本屋にいた頃、「POPが良い」という話になって、みんながやたらと書き出したり、出版社が印刷したPOPを送ってきたりするようになると、ひどい時は50面あるところに40本立ってるみたいな。そうなると売場としておかしくなる。


パッケージって単体でこだわってもすごく厳しくて、それでさっきのブランド統合だとか、併売みたいな話に合わせて、どうやっていくのかなって伺いたかったのです。


ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手弘宣氏


横手

クリニカというブランドの開発の根底にあるのは、歯垢を落とす、フッ素を残す、菌を増やさないという、歯医者さんがすすめるケアの3つのポイントなんですよね。

それに従った商品ラインナップを加えているので、お客様のリテラシーによって組み合わせて使っていただけているのかなと思います。


逸見

棚見ているときはそんなこと気づきもしませんでした。


一同

(笑)


横手

でもやっぱり、そこにも課題はあります。

冒頭に申し上げたように、取り扱いのアイテム数がどうしても増えてる傾向にあったときに、“選択の化学”じゃないけど、アイテムが多すぎることで選びにくい環境にもなりつつあるので、我々としてはパッケージとデジタルテクノロジーを使って、お口の可視化をさせるような取り組みをしています。“スマホでできる、ハグキチェッカー”とか。

そういったものがまさにこれから、流通の販売店様と一緒になってやっていくというテーマになっていますね。


デジタルでメーカーと販売店の融合を目指す”ハグキチェッカー”

株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見光次郎氏


逸見

流通サイドでも、接客でのサポートを全員にはできないですし、棚補充も完璧にはできないので、お客様がある程度決めて来店して、棚から持って行ってくれる。そのなかでも相談したい人には、「ご相談に応じます」みたいにしていかないと、人数的にも回らなくなっている。


作業もどうにかして減らさなきゃいけないという中で、メーカーさんが、マスであれ、Webであれ、デジタルであれ、コンシューマーとつながっていてくれて、そこをお手伝いするのが小売、となっていく。その中で、可能だったら少しでもデータ連携していく。


横手

そうですね。

これからローンチする“ハグキチェッカー”は、年齢と性別入れて写真を写せば、ブランドのリコメンドまで全部するんですよ。

これ持って店舗に行っていただく、もしくはECで買っていただくこともできる。

これがたとえば売場でできるとかネット上でできるっていうのを含めてやれば一番いいかなと思いますよね。


逸見

ネット上の情報がありすぎます。昔は検索したら必要な情報しか出てこなかったのが、今は企業サイトも出てくるし、個人のまとめ情報も出てくるし。


横手

何が正しいのかわかりにくくなっていますよね。


逸見

インスタグラムを見ていても、インスタグラムは写真だけなのかと思ったら、コメントたくさん書いている。検索にかかりやすいように。

インスタグラムは写真ってみんな言っていて、確かに写真も大事だけど・・・。


横手

そこにある会話が大切ですね。


郡司

ググるでなくてタグる。月齢&年齢 × タグの組み合わせみたいな使い方はありますよね。


逸見

それ見た後で、今度は発達毎とか、個にあった提案みたいなところに落とさないとなんですよね。じゃないと育児の課題になっている「何歳児はそうでなければいけない」というトラウマで、お母さんが嫌になっちゃう。


ハグキチェッカーが付いてきて、子どものケアができるようになってくると、お母さんは結構安心して選べるんじゃないかなと。


横手

そうなんですよ。

納得して購入していただければ、リピート率は高まりますので。結果的に売場でのバラつきもなくなりますから、売場の効率も上がるはずなんですけど。


逸見

そうそう。みんながそっちを向いて仕事をすることが大事なんですよね。


横手

そういう意味では、昔は販売店様との関係性は、ビジネスライクな関係だったんですけど、今はもっと共同体的な要素がすごく強くなってきていると思います。情報を共有しながら、お互いに戦略を議論していく。


さっきみたいなデジタルデバイスも、そういうところに連携していくためのもの。

もしかしたら売場のオペレーションを活性化・効率化するものになりえるっていう視点があると、重要かなと思いますけどね。


逸見

お客様の商品選択の支援、もしくは従業員の在庫調査から店頭のおすすめの支援まで、デジタルツールがもっと必要だと思います。


横手

それの受け入れ性は実際やっぱりこういう記事を読む方も増えていらっしゃいますから、多くなっているっていう認識ですけどね。


横手弘宣氏 逸見光次郎氏 郡司 昇氏


逸見

以前、あるメーカーさんとデータの共有を実験しました。全店のそのメーカー製品の在庫と販売の日次データをSKU単位で全部共有する実験を行いました。


何が起きたかって言うと、全店で1週間の販売に必要なメーカー製品の在庫がメーカーの販社に全部見えて、その分を毎週確保して補充してくれるわけですよ。さらに一部の実験店では「売れたら翌日に補充するから」と在庫をもっと減らす試みも試して。

実験店の店長たちに「このカメラ、店頭に何台あったら良い?」と聞くと、はじめは「3台ですかね」って言うんです。そして本当に翌日補充が始まると、「あれ本当に翌日に入るから、在庫は1台でいいかもしれない」って。3台のカメラが1台になるのって結構大きくって。


横手

そうですね。単価も高いですしね。


逸見

全店舗で同じことが起きていくので、結果お客様の機会ロスがほぼ発生しなくなる。


販売は増えて、滞留在庫は減るので、回転率が劇的に上がります。店舗は棚卸も減るし、お客様には安心して「明日入ってきます」と案内ができるっていう。


データを一緒に持つことによって、どうサプライチェーン全体で機会ロスを軽減していくのか、作業を減らすのかですよね。一度に入る補充商品の量が減れば減るほど楽に補充できるはずですから。


消費者の購買前情報から店頭の情報、メーカーが持っている各販売先の情報が全部つながっていくと、もっと効率良く作業を減らせるんじゃないかなと思いますよね。


郡司

(匿名化された)データを相互活用することに前向きな小売の会社も増えてきたので、これから増えていくでしょうね。


バイヤーはリベートを取るのが仕事という思い込みがなくなると変わるかなと。

現状は「欠品を減らしましょう」「販促物をちゃんと付けて、売上を上げましょう」というのは、自分の仕事じゃないと思っているので。


逸見

販促という点で、店舗のバイヤーとECのバイヤーを組ませると良いです。

ECのバイヤーは、全部データで見ているわけですよね。お客様のページビューからセッションから何から。

店舗のバイヤーは全店の売場全体をどうコントロールするかを見ているので、2人が組むとマクロとミクロが組み合わさってめちゃくちゃ効率が良くなるのですよ。


店舗のバイヤーではPOPの効果がわからないけれど、ECのバイヤーはデジタルの検証方法を知っているから、これを付けた日からどのくらい何が変わったとか、Web上で同じメッセージを出したときに何が変わったとか、いろいろなことを考えられるわけじゃないですか。


郡司

そうそう。写真差し替えたらこうなったみたいな。


逸見

仮説ではあるけれども、今までの「付けたら良かったです」よりも、もう少し踏み込んだ話ができる。

こうなってくると、バイヤーも実は仕事がやりやすくなる。

初めて売場を意識して、商品を何アイテム仕入れてどう並べる、っていうことを考えるようになるわけですよね。で、棚割まで全社会議で全店長にこう伝えるっていうことをやっていくようになるっていう。


郡司

そうなんですよ。

棚割って、店長集めての会議みたいなとこで申し伝えられることが少ないですね。


イントラの仕組みで、ポーンと上がって、3本パターン、4本パターン、5本パターン好きなのを選んで勝手に並べてっていう。これしかやっていないですよね。


昔はそれこそ「多少アレンジしても良いけど、うちの今期はこのパターンで行くよ」っていう1本だけ出ていて、細かいとこは全部はまっていないんですけど、これからの主軸はクリニカNEXT STAGEになるので、そちらをゴールデンゾーンに並べてどうのこうのっていう解説は昔の店長会議でしていたんですよね。

最近は店側のやることが増えて、どうしてもそういうことが少なくなっていく。店長会議の多くの時間が労務管理などの伝達事項に使われるからですね。会議なのに議論していないんです。


逸見

キタムラの時にうまくできていたのは、アイテム数が少ないからっていうのはあると思います。主要メーカーが決まっていて、ハンドリングしやすい。

店長会議とかで商品のメッセージと販促のメッセージがずれていたらすぐに気づいて誰かが怒りますよね。こういう棚を作るんだよね、その脇でこういう販促物、のぼりを立てる、から始まってみんな連動しているわけですから。


そういうところがやっと検証できるようになったのかなって。

とくに棚前の話になったときに思い出すのは、キタムラで私が入った2011年か12年に、全店長にiPhoneを持たせました。「棚の写真撮ってすぐ送れ」と言って、みんなチェックする。そうすると、毎回全施策ごとに全店舗を回る必要がなくなるわけですよね。もちろん定点としては回るんですけど、どこに焦点を置くかが変わるわけですよね。


今までは棚を1個1個確認していたのが、棚は画像が送られてきているから、メインの棚はここで確認する、あとは細かいメンテナンスの話とか、本当に会話しないといけないところに時間を割けるので、棚の画像が見えているとか、データ化されているというのは、とても効能が高いなと。


本当はこういうものも全部販売会社だとかメーカーさんに伝えていって、「ここがこうなっていくと、こういう人の反応が変わります」とかね。

そうするとさっきのパッケージの話ももっと、絞り込むネタができるというか、どういう人が反応しているかまで見えてくると、極端な話、子どもが見てほしいなら下段でこういう絵があったほうが良いとか、シニアに見てほしいなら、中段で文字を大きくしたメッセージを、みたいな。

当たり前のことだけれども、顧客ターゲットイコール店頭で見てほしいターゲットですよね。それが見えていないと、決めきれないこともあるんじゃないかと。


デジタルとかデータを使えば使うほど、単純にコストが減るというよりも、やりたいことができて、それにかけるコストが安くなる。


全社の効率を見たときに、「デジタルの道具をどう入れるのか?」という経営的財務的な理解とオペレーション的な理解が深まっていくと、デジタルという道具はもっともっとメーカーと小売をつなぐ道具になると思うんですよね。


郡司 昇氏 逸見光次郎氏


郡司

販促見本の話に戻すと、たとえばハブラシの見本をドラッグストアとかGMSのバイヤーが「各店に送りたいから送ってください」と言って送っても、実際は店長が持って帰って終わりだと思うんですよ、店頭に並ばないで。


それでも「あれ使ってみたら良かったよ」という感想が店長から部下にフィードバックされればまだマシだと思うんですけど、下手するとまた人にあげちゃったりしますからね。店頭で触ってもらうんだったら送る価値があるわけじゃないですか。でも、実際はそう並ばない。


逸見

見本は棚割に入っていないですもんね。見本を置くスペースみたいな。


郡司

だから見本とかサイネージという商品以外のものが、棚割のスペースに入っていても良いと思うんです。ボードとかも。


横手

たぶんその辺が、実現可能性に対する懸念が影響しているのかなと思いますね。


逸見

結局棚割にちゃんと入れておかないと、現実的に並ばない。空いた所に見本を置いてしまって、後日補充商品が入ってきたら、「見本片づけて商品を陳列しなくちゃ」という話になるので、売場でパートさんが悩んでしまって、面減らして詰めてしまったりとかそういうことが起きる。

見本とか、そういったものもやっぱり棚割データに入れなきゃいけないと思うんですよね。


SKUの多さに棚割が限界に来ている


郡司

成城石井とか、ヤオコーのワインって、ワインの隣に解説のボードが立っているじゃないですか。成城石井の流れでローソンもそうなんだけど。あれで良いと思うんですよ。ただひたすらSKUがいっぱいある品揃えが良いんじゃなくって、各商品がちゃんと説明されているのであれば、半分のSKUのほうが逆にお客様にとってわかりやすい売場になる。とくに選ぶのに迷う商品は。


Go Insightのデータを見ていると、ハミガキ粉は解説ボードがなくても良いかもしれない。ハブラシは逆に解説ボードがあって、今よりもSKUを半分とまではいかなくても3、4割減らして、こういう特徴のある商品がちゃんと試せるとか。という形の売場があっても良いと思うんですよね。


横手

実際にニーズはあって、ハブラシの場合はとくに見本と特徴がわかりやすくなっていて。

ハブラシ売場の場合は、商品と商品のスキ間やプライスカード上のスペースをうまく使うか。

エンドも同じように重要だと思っていて、製品の在庫を減らして、POPを入れてっていうのは、2014年から提案し続けていてとても評価が良いんですね。


逸見

エンド台に置く怖さって、ボリュームを作らなきゃいけないから在庫がかさむことですよね。それがPOPだとか販促物できちんと想定されていて、見えている在庫はちゃんと並んでいるけど、奥行きは少なくて良くなるとしたら、小売店にとっては良いことだし。


横手

我々は2014年からそれをやり続けていて、それは販売店様にとっても受けが良いですね。


株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見光次郎氏


逸見

コンサルで回っていても、いまだに「店頭のSKUを増やすことで売上が上がるんだ」という人はたくさんいます。

でもデータで見るとほとんどそんなことはなく、特定の商品の回転に集中していて、年間1回転もしないSKUが山のようにある。


昔はそれでも置かなければいけなかった。

でも今は、ECで取り寄せとかネットで受発注できるので、それよりも絞り込んで、お客様が選びやすいようした方が良い。

POPを付けることによって、メーカーさんが何を伝えたいのかというメッセージがちゃんと伝わる棚にしていくほうが売れると思います。


たとえば、コンビニでは棚を上げていますよね。2m近い棚とか。あれ結局アイテム数が増えて、売上が上がったことになっていますが、在庫回転率は落ちているわけですよ。

お客様にとっても、前はコンビニって見渡せるはずだったのに今はこう壁になってるわけですよね。


そうすると今度は、滞在時間が変に増えているけれども必要なものが探せないということになってしまうので、やっぱり棚を減らしていく、それからSKUを減らしていく、探しやすくしていく、そして常設で置かなくて良いものは取り寄せ販売ができるという構造にしていったほうが良い。


選ぼうと思ったときに、しょうがないから価格で見たりとかするわけですよね、消費者の目線からいくと。

でも本当はちゃんとメッセージがあって、効能書きがあって、これをシリーズで使っていくと良いんだよねっていうのがわかったら、本当はそれを試したくなると思います。


棚割のなかにきちんと、“販促物”、“見本”という話まで、くっついてくると良いなと思います。


横手

そこはやっぱり、販売店さん毎に課題が異なっていると思います。売場のスペースに限りがどうしてもあるので、デジタルでパーソナライズした広告を打つことで、その店頭販促物の変わりにするような、考え方の企業様もいらっしゃいます。


逸見

でも結局どうなんですか?

デジタルで見ているものと、店頭でのものが一致するのかしないのか。


横手

検証が重要ですね。

大手のドラッグストアさんだったら、店舗販売もやっていますし、ECもやられているので・・・


逸見

でもハブラシやハミガキ粉といった日用雑貨をECでっていうときついですよね、単価的に。


横手

まあ、どこに納得するポイントがあるかですよね。

1品買いに送料を払う、というのはあまり得策ではないと思うので。お子さまのおられるご家庭だったら、「乳製品とおむつと一緒にオーラルケア関連も買うか」と思えるかどうかですよね。


逸見

最初は多分店舗だと思うんですよね。

店舗で買って納得したら、リピート購入は「ECでも良いや」になるかもしれないですけど。


郡司

私のドラッグストアEC経験で言うと、ハミガキ粉に関しては、高機能・高価格のものほどECで売りやすい。

利幅があり注力できる商品なので、LP(狭義のLanding Page:訪問者のアクションを誘導することに特化した縦長レイアウトのページ)を作ったり、コンテンツ作るっていうのもあるんですけど、メッセージを適切に伝えることで、「ああ、こんなのあったんだ」っていう。

メッセージが伝わった後に買っていただいているのでリピートも増える。


SKUの多すぎる店頭では、どんなに良い商品が並んでいても、さっきからの話で言うと気づけないですよね。


逸見

そう。視認性の問題ですよね。


郡司

ECでは視認性を表現するのが比較的容易っていうか。店頭でもできるんですよ、やっていないだけで。


逆にECでは低価格ハミガキ粉はピックアップや配送のコストという中間コストの問題があるので向かないですね。品揃えとしては揃えるけど露出は抑える。


逸見

20年ECやっていて思うのが、店頭はSKUが多くて目立たせにくいのに対して、ECでは検索以外のピックアップされた商品は、情報をたくさん付けやすいって話をしてましたが、店舗も一緒なんじゃないかと最近思っていて。こんなにSKUいらないんじゃないかっていう。


もともとセブンネットショッピングにいたときも、鈴木会長の方針は、「店頭アイテム増やすのには限界がある。だから店舗に置けないものはECで扱うんだよね」っておっしゃり始めたのがたしか2000年くらいの話です。


横手

売り場の中で今伸びているところと伸びていないところは、おそらく検証をすれば明確ですよね。だから、どうしても伸びているところのスペースが増えて、アイテムを増やすという思想が働きがちなんですけど。ただ、アイテムを増やすにしても、「どういう売場を作って、お客様に提案していくか?」というところを、メーカーと販売店様と卸店様が共有できる余地が、前より大きくなっているなっていう実感はすごくあります。

とくにオーラルケアの分野の場合は、我々としては相応な提案が求められますので、SKUの増減と提案力が新しいポイントかなと思いますね。


逸見

棚のなかで松・竹・梅がちゃんと並んで、お客案が選べる。

今は、松・竹・梅の識別が値段でしかつかないですからね。


横手

そうですね。実際の店舗でのピッキングの行動。迷ってから買うまでっていうデータが、もっと、メーカーと販売店様で共有できれば、できることがかなり増えると思います。


逸見

みんな経験値で思い込んでいることはけして間違ってはいないんだけれども、思い込みが強い人ほど、データで事実を見るとすっと変わるんですよ。早いんですよ。それなりのロジックはちゃんとできあがったところに新しいデータが入ってくるので、「じゃあ、こうするんだよな」という話になってきます。

やっぱりデータで可視化して、事実を見えるようにするっていうのは、本当に大きいなって思います。


中編では、メーカーが消費者に伝えたいメッセージと販促物のあり方、そして消費者が見つけやすいSKUのあり方について語ってもらった。後編ではGo Insightを活用した、店舗での消費者の購買行動についてお届けする。


プロフィール紹介

ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手 弘宣氏

横手 弘宣
ライオン株式会社 ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー

2000年ライオン株式会社入社。
営業を6年間経験後、マーケティング本部へ。
マーケティング本部では、掃除用クリーナーである「ルックブランド」の担当として「まめピカ」・「おふろの防カビくん煙剤」などの開発を担当。その後2年間、実務を離れてMBA留学へ。卒業後、現職に着任。現在は、クリニカを中心とした複数のハミガキブランドのブランドマネジャー。


株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見 光次郎氏

逸見光次郎
株式会社CaTラボ 代表取締役 オムニチャネルコンサルタント

三省堂書店店頭勤務、ソフトバンク イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)立ち上げ、AmazonジャパンBooksMD、イオン事業企画(ネットスーパー立ち上げ)及びデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ 執行役員EC事業部長、同オムチャネル(人間力EC)推進担当を経て独立。ローソンマーケティング本部長補佐、千趣会執行役員マーケティング担当を兼務。
現在は独立して、経営と現場、ITと営業、顧客と企業の繋がりを重視した全体最適のコンサルタントに。継続的な利益と顧客満足を重要指標とし、経営戦略立案からオペレーション改善、IT設計まで行う。
プリズマティクス社アドバイザー、GMOメイクショップオムニチャネルスーパーバイザー、流通問題研究協会特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役コンサルティング部門統括を兼務。


店舗のICT活用研究所 代表 郡司 昇氏

郡司 昇
店舗のICT活用研究所 代表

1999年株式会社ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。 
2007年セイジョー入社。調剤事業部課長→営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年株式会社ココカラファインOEC社長就任。2016年株式会社ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。
 2018年4月~現職。ITベンダーの持つ最新技術をどのように小売業で価値を持たせていくかをベンダー、小売業双方の三方良しを実現する手助けをしている。

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