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ライオンに学ぶIoTを活用した店舗の棚割の課題と未来~スペシャル対談(前編)~

ゲスト:ライオン株式会社 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー 横手弘宣氏
   :株式会社CaTラボ 代表取締役 逸見光次郎氏
進行 :店舗のICT活用研究所代表 郡司 昇氏



GMS(総合スーパー)やチェーンストアの台頭と飽和が叫ばれ、ネットスーパーやECサイトが興隆する昨今、ICTの発展によりこれまで見えなかった数値が見える化されることによって、店舗の棚割がどのように変わるのか。

オーラルケアのトップブランドであるライオンのブランドマネジャー横手 弘宣氏と、オムニチャネルのプロである逸見 光次郎氏、店舗におけるICT化のプロ 郡司 昇氏に、コニカミノルタマーケティングサービス(以下、コニカミノルタ)が提供するGo Insight(顧客行動解析サービス)の効果について、メーカーの視点と小売業のプロの視点で、余すことなく語ってもらった。前編・中編・後編に分けてお届けする。



目次[非表示]

  1. 1.暗中模索が続く“棚割”への意識
  2. 2.在庫管理のあるべき姿
  3. 3.プロフィール紹介


暗中模索が続く“棚割”への意識


郡司

今日は、ライオンのブランドマネジャー、オムニチャネルのプロとの対談ということで、いろいろネタを考えてきました。


1つは“棚割”に対しての考え方。

「現状はこうだよね」もしくは「本当はこうしたい」という話から、ICT技術がいろいろ発展してきたので「こんなことできるんじゃないの?」という仮説とその検証手法の話。


2つ目は、商品パッケージに関して。

横手さんの手掛けているクリニカであれば、予防歯科を打ち出してリブランディングしたわけですので、店頭でいかに競合と差をつけてどういうメッセージを伝えていくのか?

オムニチャネル時代になってくると、当然「店頭でいかに手に取ってもらえるか」という話と、「家庭において利用した後に再び購入につなげたい」、そういうパッケージの話。


3つ目が店頭の販促物。

どういう演出をするか、そして効果。また、「店舗でテクノロジーを使うってどういうものがあるの?」というところで、Go Insightにとらわれず、今期待していること。

IoTなどで取得されたデータをいかに今までのデータと組み合わせて活用していくか、Go Insightの結果から見えた未来ということまでつなげていきましょう。


逸見光次郎氏


逸見

私がGMSに入って初めて知ったのが、「棚割は自社の従業員が作っているんじゃないんだ」ということですよね。


横手

カテゴリによりますけどね。


逸見

それこそ日用雑貨だったら、日雑メーカーの販売会社さんがしっかり作りこんでいますよね。


横手

おっしゃるとおり。


逸見

GMS時代、ネットスーパーを立ち上げるとき、MD(merchandising:マーチャンダイジング)を担当していた商品部に、商品情報と棚割情報をどのタイミングで改変しているのか、ヒアリングしたんです。


そうしたら「自分で手を動かしてない」みたいな話をするんで、「どういうこと?」って言ったら、後ろに販売会社さんがいっぱい出てきて、みんな「棚作ってます」って。


販売会社さんには、「自社メーカーの商品も売れていいんだけど、他メーカーの商品も均等に売れるようにね」みたいな都合の良い(笑)指示を出しているわけじゃないですか。


横手

いえいえ、そんなことないです(笑)


逸見

小売側が、思った以上に棚割をきちんと意識していないと思っているんですよね。

さらに、棚割に合わせて商品の補充がうまくできているかというと、全くできていない。

社内で聞いていると、棚割情報、棚割データというのはあまり正確じゃないみたいな。店舗によって、欠品が出たら入れ替えちゃったりとかするから。


棚割は顧客接点としてとても大事なはずなのに、小売のなかではいわゆる“商品と販売の境目”にあるところですよね。

商品を調達してきて、原価を抑えて会社に入れました、で、今度は店舗の販売営業が店頭に陳列して販売をするという話なんですけど、ここにすごいギャップがあって。


棚割って海外では結構こまめに管理されていて、それこそアプリと連動するくらいまでいっているのに、日本は意外と棚割を重視していない気がするんです。


横手弘宣氏


横手

重要です、というのは間違いなくて。重要ななかでも2つ視点があるかなと思っていて。

1個はやっぱり“棚割の戦略”という視点と、もう1個は“実現度合い”。


逸見

そうですね。実行度ですよね。


横手

2個の視点で考えないといけない。


逸見

おっしゃるとおりです。


横手

とくに戦略の面で言うと、私オーラルケア担当なので、オーラルケアでお話させていただきますと、ヘアケア関連の商材よりも、オーラルケア関連の商材のほうが売場での面積が増しているというなかで、取り扱いのアイテム数もどうしても増えている。

SKU(Stock Keeping Unit:ストック・キーピング・ユニット。商品管理の最小単位)が増えるなかで、お客様がわかりにくい売場になりがちではあるかなと思います。

そういう意味で言うと、1つ目の視点は、“お客様が買いやすい戦略”っていうのをいかに考えるかがポイント。

もう1つは、実現可能性の視点ですけれども、販売店様によって、売場の徹底度合い、っていうか。


逸見

きちんとメンテナンスし続けられるかどうかですもんね。


横手

かつ人材の獲得コストが上がっているなかで、「もっと接客に時間を割きたい」というご意向もあられますし、そういう意味では、戦略と実現可能性という意味で。

たとえば定番で視認性が高まって、付けやすくて活用しやすい販促物みたいな視点も重要になってきますし。

あとはメーカーのエゴではなくて、カテゴリの提案につながるような店頭物っていうのも重要性が増しているのかなと思います。


逸見

横手さんのオーラルケアとか予防性みたいなところを前に前に出していくことで、「確かに御社の商品は前に出ているから売れるんだけれども、当然お客様は選択肢を見たい」というところ。他社の商品も同じように並んでいると、そのなかからお客様が選択できるということですよね。


横手

まずはゾーンがわかりやすいかどうか。オーラルケアで言うと、目的別のニーズがあります。

歯周病の予防、虫歯の予防、口臭とか。そういう部分が何となく認識できるかというのがポイントになるとは思います。


郡司

店頭実現度について、ドラッグストア業界を例にすると、もともとアメリカではメーカーさんに小売業の評価をしてもらうっていう取り組みをしているんですね。日本でも5年か6年くらい前からやっているんです。


リサーチャーが各メーカーさんにヒアリングしてくるんですよ。そうすると不満の大きいのが2つあって、1個は“返品が多い”。これは先日、ある量販店の顧問の方と話したときにも「え?スーパーとドラッグストアで返品率ってそんなに違うの?」って驚かれてた。


もう1個が店頭での実現度。「棚割はこうします。1,300店舗に必ず1ケースずつ納品して、これをいつから展開します」という握りを、ドラッグストアの商品部とメーカーの営業の方とするわけですよね。


でも実際は、発注はしているんだけど、店舗の倉庫にそのまま保管されていたり、かろうじて店舗の前に出していたとしても、言っているとおり並んでいない。

それこそおっしゃっていたように販促物がついていない。「ここにこう並べる」という約束だったのに、他社の商品や販促物とごっちゃになっちゃって。


横手

そうそう。ありますね。


郡司

そういうケースが多くてですね。

毎年返品率の評価が低い企業がある。そうすると、トップが商品部と店舗部門の管理職に向けて「去年も今年も悪いじゃないか。こんなんじゃメーカーさんに信頼されないからちゃんとやれ!」と言うわけですよ。

「ちゃんとやれ」と言われて来年どうなるかというと変わらないわけですよ。


横手

「ちゃんとやれ」に明確な手段がともなっていないと、実現はできないですからね。


郡司

そうなんですよね。「ちゃんとしなきゃいけない」とみんな思っているですけど、ちゃんとならない。なので多くの小売業に対して、メーカーさんが苛立っているのはそういう話なんじゃないかなって。


横手

苛立ってはないです(笑)


逸見

GMSで、「納品された商品がなぜ店頭にスムーズに出ないのか?」といったときに、たとえば10トン車で商品が入ってきて、ガーッと100本カゴ台車をおろしました。アルバイトはとりあえず地下の駐車場の脇にストックします。「これはだれが補充するの?」と聞くと「明日のアルバイトです」って言うんですよね。「これロケーション管理しているの?」と聞くと「してません!」って言って。


暗闇の駐車場で人が商品を探している光景をよく見ると思うんですけど、とりあえず仕入れ原価さえコントロールしたら利益が出るだろうという話と、PLに載ってくるのはあくまで販売原価の話なので、店頭に並んで売れない限りはただの見積もりなんですよねっていう、その辺の理解がまだまだ進まない。


だから商品部門と営業・販売部門が、小売のなかで対立してしまっている。本当は分業にすることで効率良く回そうと思って分けているのに。実は小さいチェーンとか店舗のほうがきちんとハンドリングできているから回るわけですよね。結構大手になってチェーンストアで棚組んでってなるとなかなかできない。


もう1つの要素は、チェーンストアと言いながら、棚のサイズがガタガタに違うからですよね。日本のチェーンストアに「棚のサイズはみんな同じか?オーラルケアの棚はみんな同じサイズか?」って言ったら、みんな違いますもんね。

そこまでやっぱり棚割に反映しきれてない。


なので冒頭に申し上げた、あまりにも棚割を重視していないんじゃないかっていう。意識しているほど、実現の手段を考えていないっていう。


横手

私の解釈だと、重視はしていらっしゃるんですけども、実現面においての、やるすべが暗中模索というか、全企業さん悩まれている感じはしますよね。


郡司

本当にそうなんですよね。

アメリカの小売と日本の小売で大きく違うのは、店舗ごとのロケーション管理ができているかどうか、というのがあると思っていまして。

Walmartでもそうだし、Walgreensでもそうだし、The Home Depotでもそうです。アプリを使うと、「クリニカがどこにある、何番目の棚の何段目にある」って必ず出るじゃないですか。日本であれをやっているところって皆無です。

やりたくても、できないのですよね。A店のクリニカがどこに並んでいるかっているのを、A店の人は見ているから知っているけれども、本部で把握している人はだれもいない。


逸見

視察で行くと面白くて。我々は当たり前に棚割からちゃんと探せるのは面白いよねって思うじゃないですか。でも視察に行く人は、それよりも「アプリに4個って表示してあるのに、実際に3個しかない。ほらダメじゃないか」って言うんですよね。

この場合データの正確性はどうでも良くて、それよりもお客様が探しやすいという観点の棚割であるべきなのに、「数値の管理ができていないからやっぱりダメだよね」みたいな。


郡司

「見せないほうがいい!」ってなっちゃう(笑)


逸見

そうなんですよ。

結局そっちに行ってしまって、自分たちがマイナスと捉えられないように、見せないという発想になる。


でも海外ではほとんどそれが実行されていますし、毎年海外視察に行っていますけど、日本ほど欠品が多い棚って存在しないですよね。

一時的にドカッと売れて商品がないということはありますけど、満遍なくあちこちに欠品があるような棚なんて普通存在しませんもんね。


郡司

僕の認識はちょっと違っていて、欠品率はそんなに変わらないと思っているんですよ。

むしろ日本は店舗が小さい分目が届いて、比率で言うと少ないと思っていて。

問題は何かというと、「理論在庫上、これは店舗に10個あります」ということがあっても、実はバックヤードに何個あるか、店頭に何個あるかということを把握できていない。


逸見

そう、だからね、“欠品”の定義なんですよ。

私は当たり前に“店頭欠品”の話をしているんですけども、理論在庫のDB(DataBase:データベース)上の話をするから、「在庫は100あるじゃないか」「店頭がスカスカじゃん!」って。補充が間に合わないからしょうがないんだって。論点がどんどんすり替わっていくっていう。



在庫管理のあるべき姿

郡司 昇氏・逸見 光次郎氏・横手 弘宣氏


郡司

もともとは従業員教育用に作った、“SparkCity”というWalmartのゲームアプリがあって。


逸見

棚補充のオペレーションが入っているやつですよね。


郡司

Walmartの店舗内で、実際のハンドヘルド端末を使うみたいな。

倉庫に行ったり店内に行ったりして、端末からコントロールするんですけど。


逸見

“ひとりOJT”みたいな感じですよね(笑)


郡司

そうそう。

倉庫に行ったときに、倉庫在庫が15個あります。店頭は3個です。

倉庫在庫から9個出します。そうすると店頭の在庫が12個になって、バックヤードが6個になります。

要は、同じ店舗在庫18個でも店頭とバックヤードの数を管理しているんですよね。

もともとは従業員教育用のアプリなので、従業員教育でそれやってるってことは、店頭でももちろんそれをやってるってことじゃないですか。


逸見

あれだけセンター配送できちんと流通まで抑えていたら、サプライチェーン上の在庫まで管理していますから、店頭まできっちりとつながっているわけですよね。

日本だと分業で分断してしまって、店頭在庫、下のストック在庫、バックヤード在庫っていうものが識別されていない。


横手

そういう意味では、我々メーカー側としては、オーラルケア関連の店舗スペースが増えているとすると、SKUが増える傾向のなかでも効率を考えながら、単品売りじゃなくて、お客様のニーズにあわせた組み合わせの提案を考えていかないと。


郡司

カートリッジ補充してもらう感じですよね。


横手

そうですよね。そういう手間を省くことができそうなものを提案したり。

あとは市場活性化という視点で、オーラルケア分野ではまだ日本はデンタルフロスとかデンタルリンスの使用率がまだまだ低いので、組み合わせて買い上げ点数を上げていくってことを念頭に置いた売場っていうのも重要ですね。


郡司

市場調査の結果、まだまだ伸びるっておっしゃっていますもんね。


逸見

そうなったとき、店頭の棚補充が追い付かないというのが一番問題だと思いますよね。


横手

そういう意味では、実現可能性の部分。


逸見

単品補充から、パッケージではめていって、プライスカードも連動していくみたいな形にするだとか、何か変わっていかないと、今の1個1個補充するとか・・・。それこそ歯ブラシとかだと色が違ってもJANコードがみんな一緒だったりするじゃないですか。


一同

(笑)


逸見

あれもネットスーパーのときに初めて知りました。


郡司

あれECでこぼれるんですよね。「青3本ください」みたいな。


逸見

お客様に「備考欄に色を書いてください」って言わなきゃいけない。マスターだけは色分けしておいて。


郡司

対応していたんですか?


逸見

やりましたよ。


郡司

すごいですね。それやっちゃうと、極端に残った在庫の色が偏るので私はやりませんでした。


逸見

GMSの在庫はたくさんあります(笑)

本当にそういうところをやっていかないと、店舗が大きくなればなるほど、バックヤードからの距離があまりにもありすぎるので補充が追い付かないんですよね。


郡司

だから補充の優先順位も含めて、まず、データ化すること。

店舗の状況をデータ化して、それに応じてPI(Purchase Index:レジ通過客千人当たりの購買指数)値の高い商品が「店頭にあと2個しかありません」ってなったら、「優先的に補充せよ」という話になるじゃないですか。年に2回しか売れない商品よりも。

それに従って、作業を人がするのでも良いしロボットがするのでも良いし、とにかくやる。そうすると、機会損失も減ってくるので、売上が上がる。

店頭実現度が上がるということがどういうことかと言うと、メーカーさんに渡るPOSデータが正しいものになってくるってことですよね。


逸見

そうなったら売上と利益がきちんと上がってくるし、お互いの在庫消化率も上がっていくので、良い話しか本当はないんですよね。そこでのロスが一番もったいないと思っています。



前編では、リアルな店舗の棚割から在庫定義、ICTによる在庫管理のあるべき姿を語ってもらった。中編では店頭に並んだ商品をいかに顧客に手に取ってもらえるか、メーカー視点でのパッケージの見せ方についてお届けする。




プロフィール紹介

横手 弘宣氏

横手 弘宣
ライオン株式会社 ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー

2000年ライオン株式会社入社。
営業を6年間経験後、マーケティング本部へ。
マーケティング本部では、掃除用クリーナーである「ルックブランド」の担当として「まめピカ」・「おふろの防カビくん煙剤」などの開発を担当。その後2年間、実務を離れてMBA留学へ。卒業後、現職に着任。現在は、クリニカを中心とした複数のハミガキブランドのブランドマネジャー。


逸見 光次郎氏

逸見 光次郎
株式会社CaTラボ 代表取締役 オムニチャネルコンサルタント

三省堂書店店頭勤務、ソフトバンク イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)立ち上げ、AmazonジャパンBooksMD、イオン事業企画(ネットスーパー立ち上げ)及びデジタルビジネス戦略担当、カメラのキタムラ 執行役員EC事業部長、同オムチャネル(人間力EC)推進担当を経て独立。ローソンマーケティング本部長補佐、千趣会執行役員マーケティング担当を兼務。
現在は独立して、経営と現場、ITと営業、顧客と企業の繋がりを重視した全体最適のコンサルタントに。継続的な利益と顧客満足を重要指標とし、経営戦略立案からオペレーション改善、IT設計まで行う。
プリズマティクス社アドバイザー、GMOメイクショップオムニチャネルスーパーバイザー、流通問題研究協会特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役コンサルティング部門統括を兼務。


郡司 昇氏

郡司 昇
店舗のICT活用研究所 代表

1999年株式会社ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。 
2007年セイジョー入社。調剤事業部課長→営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年株式会社ココカラファインOEC社長就任。2016年株式会社ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。
 2018年4月~現職。ITベンダーの持つ最新技術をどのように小売業で価値を持たせていくかをベンダー、小売業双方の三方良しを実現する手助けをしている。


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