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2023年6月1日、コニカミノルタマーケティングサービス株式会社はゴウリカマーケティング株式会社に商号を変更いたしました。

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2021.06.15

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エンジニアが本当に働きたい会社・組織に必要とされるもの コニカミノルタマーケティングサービスのこれから【第1回】ソフトウェア・ファーストを実現する為に必要なことは?

エンジニアが本当に働きたい会社・組織に必要とされるもの コニカミノルタマーケティングサービスのこれから【第1回】ソフトウェア・ファーストを実現する為に必要なことは?

コニカミノルタのグループ会社として、サイエンスの力で日本企業のマーケティング部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現していくコニカミノルタマーケティングサービス(KMMS)。コロナ禍において、急速に需要の増えたマーケ、セールス部門のDXニーズに応え、業績を2019年度の2倍に伸ばしている。さらなる飛躍のためにはエンジニア体制の再構築が必須と判断し、Tably株式会社の及川卓也氏にアドバイザーを依頼。及川氏はGoogleをはじめとする外資系企業のエンジニアとして活躍し、独立後は数多くの企業でプロダクト戦略や、エンジニアリングの組織作りで、大きな実績を挙げています。今回は、弊社社長の岡本と及川氏による対談を通じて、コニカミノルタマーケティングサービスの2021年以降の戦略についての対談を3回に分けて配信します。

プロフィール

岡本賢祐(おかもと けんすけ)

2001年コニカミノルタに入社。医療ITのソリューション営業、米国販社へ2001年コニカミノルタ入社後、ヘルスケア部門の国内新規サービスの医療IT部門を経て、アメリカの販社へ駐在し、会社運営全般を経験。
帰国後は中国での新サービス立ち上げなどに従事し、新事業のマーケティングサービス事業部へ配属。海外のマーケティングサービス会社を買収後、2015年、日本法人としてコニカミノルタマーケティングサービス株式会社を立ち上げ、17年より22年3月まで代表取締役を務める。

Tably株式会社
代表取締役
及川卓也(おいかわ たくや)

MicrosoftにてWindowsおよびその関連製品の開発を担当した後、Googleに転職し、ウェブ検索やGoogleニュースのプロダクトマネジメントやGoogle Chromeのエンジニアリングマネジメントに従事。その後、Qiitaの運営元であるIncrementsに転職。独立後、プロダクト戦略やエンジニアリング組織作りなどで企業への支援を行うTably株式会社を創業。

ソフトウェア・ファーストの第一歩は「自分事化」

岡本
この1年コロナウィルスの影響で、それ以前には考えられなかった働き方が定着しつつあります。

DXの促進をサポートするKMMSにとっては、予想外の追い風になり、会社は前年比2倍ほど成長し、社会の大きな変化を感じる1年でした。

一方、経営者の立場からは危機感の方が強く、変化に対する更なる柔軟な対応と、成長スピードを上げる強い組織設計の必要を痛感した1年でもありました。

そこで、次の30年の持続可能な成長を考えて、変動の大きい今だからこそ、組織を大きく変革することに決めました。そんな折に、及川さんのご著書『ソフトウェア・ファースト』を拝読し、大変感銘を受けました。弊社も、そうした企業へ脱皮したいと願い、その改革のお手伝いを及川さんにお願いしているところです。

まず、最初に、ソフトウェア・ファーストとは何を目指したものなのでしょう。そして、どんなことが実現できるのでしょう。

及川
「ソフトウェア・ファースト」とは、プロダクトやサービスの開発を始めようとする時に、ソフトウェアを常に意識して計画の中に入れようというものです。その背景として、いま世の中を動かしている多くの事業や会社は、技術が占める割合が大きくなっていて、技術の中でも、ITの中でもソフトウェアがその比重を高めています。つまり、その要素をどう活用するかが大きな意味合いを持ってきている。ハードウェアなど他のITの技術は、一度世の中に出たら置き換えるのが難しいところがありますが、ソフトウェアはネットワーク技術の普及により、一度世の中に出たものを改変できる、言い換えれば進化させていく柔軟性があるんです。それゆえに今の、「不確実」「不透明」の世の中において、仮説検証をリリース後も行うことができ、なおかつ、それを進化させられるという意味でもソフトウェアが重要なのです。

最終的に、事業・プロダクトの中でソフトウェアの比重がとても小さくなる可能性がありますが、それでも大きく破壊的に産業構造を変えたり、サービスを指数関数的に進化させることができるので、そこをしっかりと理解して、どこにどう組み込むかを考えなければいけません。それがソフトウェア・ファーストの考えです。ただ、この言葉は「ソフトウェアが一番大事」だと誤解を生むかもしれません。私が伝えたいのは、まずは企画の段階からそのことを考えようということです。さらに、ソフトウェアのことはわからないからと専門家に丸投げせず、「自分事」として考えよう、ということを含めてのソフトウェア・ファーストです。

サイエンスとは仮説検証

岡本
なるほど、ソフトウェアが何よりも大事ということではなく、それが抱える限界も理解して挑む姿勢が大事ということですね。

及川
その通りです。岡本さんは私の著書をお読みいただき、「私たちの会社が目指すものはまさにこれだ」とおっしゃってくれた。ご自身は営業出身だそうですが、自分たちがソフトウェアを武器にしていない、本の中で言う「手の内化」していないことに気づかれたのかなと。

KMMSさんは、「マーケティングをサイエンスする」という会社です。私はその「サイエンスする」という言葉に惹かれます。物事はロジックだけで解決できないと理解している一方、やはりしっかりと解きほぐして再現性のある形にすることは大事だと思っています。

もう一つ付け加えると、KMMSさんとビジョン・ミッションについて話した時に、私の想いを伝えたんですが、「サイエンスとはロマン」なんです。つまり、サイエンスとは未知のものでわからないものを見つけ出す手法だと思うんです。解釈は人それぞれで違いますが、私はサイエンスとは仮説検証だと思っています。これを繰り返して真理に近づく、実験を重ねてエビデンスを重ねた後にそれをロジックとして落としていくことがサイエンスで、御社はそれをマーケティングの領域でやろうとされているところに共感しました。

「何をやりたいのか」を突き詰めたら、ビジョン・ミッションにたどり着く

岡本
及川さんからアドバイスを頂いて驚いたのは、最初に徹底的にビジョンとミッションを行動ベースまで落とし込んで聞かれたことです。確かにご著書には「(ソフトウェア・ファーストに)必要なのは手法の理解ではなく、思想や姿勢です」とありました。

私はビジネス系と開発系を分けて考えてしまっていたんです。つまりビジョン・ミッションをビジネスチームと開発チームに分けて、それぞれ解釈するのを良しとしていました。しかし、そうではなく、どのチームも、例えば経理や人事でもDevOps(開発と運用が一体化したプロダクトの進化のさせ方)チームでも同じ解釈をすべきで、そこにソフトウェア・ファーストの要素が思想として入っていないと機能しないわけですね。

このような考えに至ったきっかけは何だったのでしょうか?

及川
社会人になる時に考えました。大学生時代がバブルの後期で、社会は華やかで、会社に就職せず、遊んで暮らしたかったのです。学生ですから、仕事が楽しいというイメージがなく、やりがいや面白さを理解しておらず、お金のために働くのは嫌だなあという気持ちで……。

でも、社会にはやっぱり出なければいけないから、人生がどれくらいあるかを考えて、自分が人類に何を残せるかと考えたんです。そこは父親の影響が大きかった。大学2年時に亡くなりましたが、土木設計技師で、日本のあちこちに父が残した有名な橋や道路があって、子供ながらに誇りでした。ですから、私も世の中にしっかり使われるものを作りたいなと思いました。その時に大学での専門じゃないけど、ソフトウェアの方に進んだんです。

ビジョンやミッションとは、作り上げたい社会、未来じゃないですか、それをすごく意識していましたね。たまたま入ったDECは、優れた技術を持った会社で、MicrosoftやGoogleと言う企業は私が口癖のように言う、「世界を変える」を体現できた会社です。実際、Windowsで世界は変わったし、Googleもそう。全世界といわず、目の前にいる人たちでもいいんですが、何か大きいこと、インパクトを残すということをやりたかったんですね。そうして「何をやりたいんだろう」と抽象度を上げていって、たどり着いたのはビジョン・ミッションがしっかりとしていなければいけないということでした。

なぜなら、ビジョン・ミッションというのは目指したい姿であり、人をエンパワーするものだと思うんです。さらに、自分自身もエンパワーされると思うんです、それがどんなに大変であってもです。

岡本
熱い想いが伝わってきますが、個人ではなくて、チームでやるべきだと思ったのはいつですか?

及川
チームじゃないと成し遂げられないからですね。私の会社は小さいですが、もう一人もう一人と組むことで、1+1が単に2ではなくなる。下手すると、2にもならずに1.3になることもありますが、うまく作用すると、3、4、5にもなる。それに、何かを成し遂げよう、改善しようと思った時、個人でやれることは限られているので、会社のメンバーや、私がお手伝いする会社側の人が、スケールするためには人と人がチームにならなければならないんです。それは30代前半、Microsoftに入ったくらいに気付きました。

ソフトウェアの中心技術を「手の内化」する

岡本
なるほど、そんな若い頃から積み上げてきたものだったんですね。では、ソフトウェア・ファーストを全社で共有するために必要なステップについてもご教示ください。

及川
まず、ソフトウェア・ファーストを「自分事」として考えるべきです。一番最初のステップは、「あなたの会社にとってソフトウェア・ファーストとは?」、と聞かれた時に全社員が同じ答えを出せるくらい、「自分事」として表明できるのが大事だと思います。ただ、会社によってはそれが目的化してしまっている。ソフトウェア・ファーストは、あくまでも手段なんですね。ソフトウェア・ファースト化することによって、やりたいものが何かをしっかり明確にする必要があるんです。

その上で大事なのは、ソフトウェアを中心とした技術を「手の内化」すること。自分たちのコア技術として持つべきもの、パートナーと一緒に解決すべきものを自分たちでしっかりと意思決定することが大事です。最初は解像度が粗くて仕方ないですし、何度も見直しがかかる部分かもしれませんが、まずは、「手の内化」を達成することが大事です。

ただ、読む人によっては、それをいいように解釈する人がいます。例えば、基本SIer(システムインテグレーター企業)さんに依存する構造を変えないで、SIerをコントロールしようとする人がいるんです。

また、内製化率をゴールにしたり、「うちの会社は内製化しないけどソフトウェア・ファーストにしたい」と頭から決めてかかるのはおかしい。自分たちにとっての「ソフトウェア・ファースト」は、最終的なゴールとして、「どんな人とどんな組織にするか」を、ある程度見極めた上で進める必要があります。

私はDXとは変革だと思っています。人と組織の変革は絶対に必要なんです。

私の持論ですが、「技術の活用、事業の活用は、人と組織がしっかりと変革を推進していく組織になっていたら、必然的にできる」と思っています。KMMSさんからの依頼は、「まず、そこをお手伝いください」というものでした。私はそれが素晴らしいと思いました。早速、人材の評価、育成、採用のお手伝いをしましたが、その部分について改革をしようとするのは、人と組織のところをしっかりやり、事業がある程度スケールして成長が見えていたからこそだと思います。最後のゴールの要素をしっかり考えなければいけないのですが、それができていない組織が多いのです。

岡本
ありがとうございます。

第2回に続く

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